トトガノート

All about TOTOGA

進化

「新・人体の矛盾」の「9 胎盤の出現」を読みました。(小林教室収蔵)

胎盤ということですが、最初に後産(あとざん)について書いておきます。お産というと、子どもが出てくればおしまいだとばかり思っていたのですが、その後に後産というものがあって、これもなかなか苦しいものらしいです。

後産で出てくるのが、役目を終えた胎盤です。直径16〜20センチほど、厚さが2〜3センチほどの、ホットケーキのような形をした、血のしたたるスポンジ状のものだそうです。

妊娠中の子宮壁には絨毛間腔と呼ばれる空洞ができて、母体からの動脈と静脈がここに開放されています。胎児から伸びてきた臍帯の中の動脈と静脈は胎盤の中に入り複雑に枝分かれしていますが、絨毛間腔の中で折り返しているだけ。母体の血液と胎児の血液が混じり合うことはありません。

例えるなら、母体の血液がバケツの中に入っていて、これに胎児側の血管が木の根っこのように浸っているような形。出産のタイミングで、バケツの底が抜けて、木の根っこがバケツの枠ごと引き抜かれたものが、後産で出てくることになります。

胎児が生きて成長するための栄養の摂取や呼吸、老廃物の排泄が全て胎盤で行われるわけで、そういう意味では腸であり、肺であり、腎臓なわけです。

そのうえ、熱交換(体温調節)も行われています。これが行われないと、高熱のために胎児の生命も危険になると考えられています。胎児は、爆発的な細胞分裂を繰り返しているわけですから、発熱も凄いんですね。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「8 毛根をさぐる」を読みました。(小林教室収蔵)

鼻と口の間には口蓋という仕切りがありますが、トリやヘビにはこれが無いのだそうです。自分たちの構造が当たり前だと思ってますから、ちょっとビックリです。

このような構造を二次口蓋と言うそうですが、これを持っているのは哺乳類だけ。このおかげで、鼻腔は呼吸のための専用通路となり、吸気で脳の冷却を行うと同時に肺に行くまでに暖められるという熱交換が行われています。パソコンも頭脳の役割を果たすCPUの発熱を冷やすために送風口がありますし、車のラジエターも鼻に似ています。

これは逆に言えば、発熱に悩む恒温動物であるがゆえに必要とも言えます。爬虫類までの変温動物にはあまり必要ではないかもしれない。ただ、鳥がこの構造を持たないのはどうなんでしょうか。くちばしが放熱しているのかどうか。

口の方もこれによって初めて咀嚼が可能になります。消化能力が高まり、体全体の代謝量も上がり、酸素の要求も高まり、それに呼吸専用になった鼻がこたえる…という相乗効果もあったわけです。

さて、ここから体毛の話になります。ヒトは、歯や咀嚼筋が退化する一方で、脳がどんどんと肥大化し、口の突出が無くなり、これに伴い鼻腔も退行し、上記の冷却機能が衰えました。それの代わる冷却機能として、汗腺を発達させ、汗の蒸発を妨げる体毛が無くなったのではないか…。

もちろん、仮説の域を出ないわけですが。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「8 毛根をさぐる」を読みました。(小林教室収蔵)

ヒトの体の表面は死んだ細胞で覆われている…という言い方をするとゾッとしてしまいますが、表皮をはじめ体毛も爪も死んだ細胞なのだそうです。今回の主役は体毛です。

毛と同様に皮膚を覆うものとしては、爬虫類のウロコと鳥類の羽毛があります。発生過程から比較すると、いずれも表皮(上皮)と真皮(間葉)の両者で作られます。しかし、最終的にはウロコと羽毛には真皮性の要素が含まれるけれども、毛には表皮性の要素しか含まれないそうです。

このことから、羽毛はウロコが変形してできたものと考えられるが、毛はウロコとは別物らしい。その状況証拠として挙げられるのが、ネズミのしっぽ。ネズミのしっぽはウロコで覆われており、ウロコの後ろに3本1組で毛が生えているのだそうです。

子どもの頃、ネコが食べ残したネズミのしっぽを観察したことがあるのを覚えています。哺乳類らしからぬ物体だと思ったのですが、やはりウロコだったんですね。でも、その間にまばらに毛が生えてたことまでは覚えていません。

ところで、ヒトが持っていない感覚器官としての毛、すなわちネコなどに見られるヒゲがあります。構造や発生の仕方は毛と同じなのですが、やはり体毛とは区別すべきです。

爬虫類のワニやオオトカゲの上顎の皮膚には、俗に「ニキビ」と呼ばれるウロコがあって、触覚と熱を感じる働きがあると考えられるそうです。ヒゲとの関連を指摘できるような材料はないようですが、非常に類似点があるそうです。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「7 耳の歴史」を読みました。(小林教室収蔵)

これまで触れてきましたのは中耳が中心でしたが、耳の本体と言うべきところは内耳です。聴覚の蝸牛管と、平衡感覚の半規管・球形嚢・卵形嚢という部分から成っています。

魚には蝸牛管が無いのですが、聴覚が無いのではなく、球形嚢が聴覚も兼ねているようです。高等脊椎動物の蝸牛管は、そもそもこの袋の一部が伸びてできたもの。

ヒトの発生段階で、将来の外皮となる上皮から内耳が作られることから、魚類の側線器官がそもそもの由来と考えられます。

側線器官は体壁だけでなく頭にも配管されており、このなかの感覚細胞は、水の味、水流、水圧、振動、電流まで感知しています。耳であり、鼻であり、舌であり、皮膚なわけです。

水流の変化に合わせて、体の向きを瞬時に変えている魚の動きを見ていると、水流等を感じ取る側線器官と平衡感覚がくっついているのは、当然と言えます。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「7 耳の歴史」を読みました。(小林教室収蔵)

「耳の中がけいれんしたことがある」という方の体験談。飛行機に乗って気圧が変化したあたりから耳が変で、何だかスッキリしないなーと思っていたら、突然「バタバタバタバタ」と物凄い音がするようになったとのこと。耳鼻科を受診したら「耳の痙攣」と言われた…。

これは、耳小骨についている筋肉の痙攣と思われます。

音を感じ取るのは鼓膜ですが、この振動は耳小骨に伝わります。耳小骨は、この振動を増幅して内耳に伝えるアンプのような装置です。ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨で構成されますが、てこの原理で増幅するというメカニカルな構造なのです。ツチ骨とアブミ骨には小さな筋肉が付いていて、これがボリュームの働きをしています。大きな音を聞いた後、しばらく耳が遠くなるのは、しぼったボリュームが元に戻るまでに少し時間がかかるから。

このアブミ骨筋は、絹糸の糸くずほどの大きさで、人体の中で最も小さい骨格筋だそうです。

爬虫類(両生類や鳥類も同じ)には耳小骨は一つしかなくて、哺乳類のアブミ骨に相当するものです。では、ツチ骨とキヌタ骨は何だったのか?というと、アゴの関節を構成している骨だったのだそうです。

爬虫類のアゴの構造は複雑なもので、哺乳類に移行する時、単純化するとともに力学的に合理的な構造に進化しました。この時、ツチ骨とキヌタ骨はあぶれてしまったんですね。

ところが、爬虫類は地面からアゴに伝わる振動を音として感じ取っていたので、アゴの骨は骨伝導による耳の働きもしていたわけです。アゴとしては失業してしまった2つの骨は、耳としての仕事に専念することになったわけです。

人間も骨伝導で音を感じ取ることができますが、コウモリやイルカは中耳と内耳が頭蓋骨から遊離しているので骨伝導の音は感じません。その代わりに、かれらは超音波を聞くことができるというわけです。

爬虫類時代には既に耳小骨をやっていたアブミ骨ですが、魚時代は舌顎骨だったようです。これは「さかなにはなぜしたがない」という絵本の紹介記事で触れたものです。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「7 耳の歴史」を読みました。(小林教室収蔵)

魚のエラ、見てると不思議です。こんなとこに大きな穴があいてる。人間もこんなだったらかなわんな…

ところが、この穴の名残がちゃんと残ってるんです!それがなんと耳の穴。

耳の穴を入っていきますと、鼓膜にぶち当たります。ここまでが外耳。鼓膜の奥には鼓室(耳小骨が並ぶ)という部屋があります。そこにはノドにつながるに通路(耳管)があります。

普段は鼓膜という扉が閉じていますが、鼓膜に穴があいたりすると煙草の煙を耳から出したりできるようになるそうです。でも、宴会の余興にいいとか言って穴をあけないように。難聴になりますから。

飛行機などに乗って気圧の変化が生じた時、耳管が閉じていると鼓膜の内外で気圧差が生じて聞こえが悪くなります。飴をなめると解消するのは、唾を飲み込む時に耳管が開くからです。耳管が役に立つのはこんな時ぐらいでしょうか。中耳炎の原因になっているのも耳管ですから…

でも、この通路が昔はエラ孔だったのです。原始的な魚には顎に続くエラが数列並んでいたそうで、この最前列のエラ孔が耳管→耳の穴ということらしい。

町を歩いていると、車も通れないような小路に立て札が立っていて、昔は何とか街道というメインストリートだったなんて解説が書いてることがあります。

耳の穴も、そんな昔の大通りと言えそうです。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

サメは浮き袋が無いので、泳いでいないと沈んでしまうというのを先日書きました。泳いでいることによって流体力学的に発生する浮力でしか浮かないのですね。ところが、それよりなにより、エラがないので、止まっていると呼吸ができないらしい。網に引っ掛かると死んでしまう。これはかなり不便ですね。

常に動いていないと沈んでいく…息ができない…それがサメのさだめ。

逆に言うと、サメの祖先からずっと、常に泳いでいるのが当たり前なので、それを前提とした形で進化してきたということなのでしょう。

我々の体にはそんな前提が無くて良かったと思うかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?最近、運動の効用がいろいろと分かっています。体の隅々までの十分な血行を確保するには運動は不可欠です。心肺機能を維持していくのにも運動は欠かせません。関節や骨の強度を維持するためにも、運動である程度の負荷をかけ続けることが必要です。などなど…大抵の現代病は運動をしていれば防げたのではないか?と言えそうなくらいです。

私たちの祖先は、これだけ直立二足歩行に突出した進化を実現させたのですから、毎日何キロも歩いていたに違いないのです。つい数十年前でも、私たちは歩かないことには何もできませんでした。でも、今は違います。歩こうとしないと、トイレに行く時と車に乗る時くらいしか歩かなくてもよくなっています。

私たちも運動をしないと沈んでいくのです。ただ、それはサメよりもゆっくりなだけなのです。

私たちも網に引っ掛かったサメと同じなのではないでしょうか?
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「6 手と足の由来」を読みました。(小林教室収蔵)

手の起源は胸鰭、足の起源は腹鰭と考えて問題は無いでしょう。ただ、鰭の位置や数は、かつてはいろいろあったようで、棘魚類は七対もの鰭を持っていた種類(クレマチウス)もいたそうです。これが、あたかも試行錯誤を繰り返すようにして前後二対の鰭に落ち着きました。

前後二対のヒレは、体の水平を保つ働きをしていました。七対もあれば安定度は増すかもしれませんが、経済的効率が悪くなる(水の抵抗が大きくなる?)ようです。

1989年に野生のシーラカンスが遊泳する姿が撮影されたそうです。速度を上げて泳ぐとき、尾鰭を振って推進しますが、その反動を打ち消すために右前ヒレと左後ろヒレ、左前ヒレと右後ろヒレをそれぞれ組として同時に動かすことが確認されました。この交互に同調した運動が、やがて陸生の四つ足の脊椎動物の歩き方に引き継がれていったと考えられます。

最初の両生類であるイクチオステガは6本以上指があったと考えられています。ヒトの手根骨のひとつ、豆状骨が6本目の指の名残だとも言われていますが、イクチオステガの5000万年後に現れたアントラコサウルス(両生類)以降、指は大抵5本になっているようです。(一部の恐竜のように3本指になった例もありますが…)

但し、このアントラコサウルスは指の骨の数(関節の数と言ってもいいが)が違います。第一指(親指)が二個、第二指(人差し指)と第五指(小指)が3個の骨でできているのはヒトと一緒ですが、第三指(中指)は4個、第四指(薬指)は5個の骨があるそうです。

親指が短く、薬指にかけて次第に長くなっていくのは、両生類として地面を腹ばいで歩く際に都合が良かったのではないかと考えられます。

キノドントは獣形爬虫類の獣歯類に分類されていて、哺乳類的な特徴のほとんどを具えています。かかとの出っぱり(踵骨の踵骨隆起)を持っており、アキレス腱があったことがうかがえます。手の指の骨の数もヒトと同じです。

馬や牛の足のように四つ足のために特化した構造と比べると、ヒトの手足はむしろ爬虫類の手に近いと言えます。また、平爪の指、指紋、母指対向性、つちふまずや踵の発達、親指から踵にかけての前後方向のアーチなどはヒトとしての独自な発達と言えます。

ただ、手足の本数は水中で泳ぐ時の都合から決まったものですし、指の本数や形は両生類として地べたを這う時の都合で決まったものです。その後のヒトとしての独自の発達はマイナーチェンジですから、どうしてもここに人体の矛盾が発生してしまうわけです。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「5 肺の起源」を読みました。(小林教室収蔵)

ポリプテルスのような古代魚には肺が見られるそうです。発生の段階で、腸管(食道)が膨らんでできるそうですが、それが腹側にできるか背側にできるかで肺かウキブクロかを区別するそうです。魚の段階では両者とも浮力調節機能を主に負っているとのこと。

人間もオギャーと言って、羊水の中から言わば陸上に現れるとき、胎児循環を終了して大人の循環に切り替わります。心臓や肺の血液の流れが劇的に切り替わるわけですが、これが両生類以降の循環だそうです。ただ、両生類の段階では肺呼吸よりも皮膚呼吸がメーンであり、柔らかい皮膚を保つため水辺を離れることはできません。

厚いウロコを獲得した爬虫類は、肋間筋による積極的な呼吸法(胸式呼吸法)を行えるようなっています。ただし、カメは肋骨と甲羅が一体化しているので、手足の出し入れや腹の筋肉を使って肺を動かしています。

鳥類は、高い体温を維持し、活発な活動をしますから、気嚢を持った特別な構造になっています。空気の流れが一方向になるので、小型ながら高効率の呼吸器です。

哺乳類は大きな肺を持ち、さらに横隔膜という強い筋肉による呼吸(腹式呼吸)も行えるようになっています。腹式呼吸は自律神経を調整する働きがあるということで座禅などでも行われます。横隔膜を支配する神経は頚椎の上部から出ているのに対して、肋間筋を支配する神経は頚椎の下部から出ているため、頚部の脊髄損傷では胸式呼吸ができなくなっても腹式呼吸はできるというケースがあると聞いたことがあります。哺乳類だけができる呼吸法として、大切にしたいものです。

サメには肺もウキブクロも無く、浮き沈みをヒレの翼力に頼っているため、静止すると沈んでしまうというのは面白いです。肺をもつ我々が泳げないなんて言ってはいけませんね。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

「新・人体の矛盾」の「4 腎臓の進化」を読みました。(小林教室収蔵)

排泄物として、大便と小便は固体か液体かの違いでしかないように感じますが、大便は食物として一度体に取り入れた物から栄養分を吸収した残りカスであり、小便は栄養分として吸収された物のなれの果て(老廃物)である、と大雑把に言えると思います。

人間の場合、22日目、全長が3ミリ足らずの頃に、最初の腎臓組織である前腎が現れるそうです。30日目頃から前腎管の周りに中腎ができ始めます。35日目頃までには中腎に取り込まれた部分以外の前腎は、完全に消滅します。中腎は、男性の場合は精巣上体・精管・精嚢・射精管に、女性の場合は卵管・子宮・膣の一部になります。中腎の末端部分が後腎となりますが、これが最終的に腎臓になります。

胎児は妊娠三カ月目ころから羊水中にオシッコを放出しており、腎臓(後腎)は機能を始めています。胎児の前腎と中腎がどんな機能をしているかは不明ですが、進化の過程ではきちんとした働きがあったはずです。

前腎は原索動物からはじまって、最も原始的な脊椎動物の腎臓です。中腎は、ヤツメウナギにその兆しが現れて、魚類と両生類の腎臓をつくっています。後腎は、爬虫類・鳥類・哺乳類の腎臓ということになります。

生物体をつくる蛋白質は老廃物となるとアミノ酸に分解され、最終的にはアンモニアになります。アンモニアは非常に毒性が強く、血液中にたった二万分の一入っても死んでしまいます。魚の場合は水中にたれ流せばよく、皮膚やエラから排出するので、腎臓の働きとしてはアンモニアの処理よりも塩類の排出の方が重要です。

生殖のために生殖細胞を外に排出する必要に迫られた時、同じ排出機能をもつ腎臓周辺の器官を改造することで対応したという事情もありそうです。

処々の事情により、前腎・中腎の過程を経て、やっと出来上がる腎臓。でも、発生段階では、必ずこの進化の過程を繰り返さなければいけないことが、ニワトリの卵の実験などで明らかになっています。

人体の矛盾・不合理性が非常によく分かる臓器のひとつだと思います。

《つづく》
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ