NHKスペシャル「女と男」第三回(1月18日放送)を見ました。
男性だけが持つY染色体が退化しています。もともと(1億6000万年前)は同じ大きさだったはずなのに、現在は大きさも小さく、遺伝情報もX染色体:Y染色体=1098:78。遅くとも500〜600万年後には消滅すると予想されます。早ければ来週!
Y染色体は一本しか存在しないため、次の世代に伝わるとき、単純なコピーが受け継がれていきます。これが退化の根本原因。
「ファインディング・ニモ」のモデルとなったカクレクマノミは性転換をします。また、爬虫類(コモドオオトカゲ)では処女懐胎(性交渉無しの妊娠)の例があります。ところが(幸か不幸か!)、哺乳類ではこの可能性は考えられません。胎盤はY染色体の中の遺伝子の指令で作られるため、Y染色体なしでは(つまりオスなしでは)、子孫を残すことはできません。
恐竜全盛の1億6000万年前に、小動物として生き延びるための方策として獲得した胎盤というシステムは、恐竜絶滅後の哺乳類の繁栄を見れば成功だったかもしれません。でも、Y染色体のなかに胎盤をつくる遺伝子を持ってしまったがために、今となっては「死へのキス」となってしまいました。
哺乳類にも全く可能性が無いわけではありません。アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミにはY染色体がありません。それでも子孫を残すことができるのは、精子を作る遺伝子が他の染色体に突然変異でできたため。性を決定する遺伝子も他の染色体にできているのだろうと考えられています。が、これは突然変異であるため、人間にも同じことが起こるのは望み薄です。
さらに悪いことには、人間の精子が特に劣化していることがわかっています。デンマークの調査によると、精子が1ミリリットル中2000万個以下(不妊症とされる)の男性は20%、4000万個以下(不妊予備軍とされる)の男性は40%いることがわかったそうです。そして日本でもほぼ同じであるらしい。人間でこの傾向が見られるのは、一夫一婦制の弊害ではないかと考えられます。乱婚の場合、精子どうしの競争があるため、劣化が抑えられるからです。
精子劣化に対する対策としては、顕微授精という技術があります。しかし、人為的に受精させるので、精子に対する競争圧力が全くかからず、精子劣化に拍車がかかることが懸念されます。
デンマークでは14人に1人が顕微授精によって生まれている…アメリカでは、精子バンクを利用する例も増えている…男として複雑です。
《最初から読む》
男性だけが持つY染色体が退化しています。もともと(1億6000万年前)は同じ大きさだったはずなのに、現在は大きさも小さく、遺伝情報もX染色体:Y染色体=1098:78。遅くとも500〜600万年後には消滅すると予想されます。早ければ来週!
Y染色体は一本しか存在しないため、次の世代に伝わるとき、単純なコピーが受け継がれていきます。これが退化の根本原因。
「ファインディング・ニモ」のモデルとなったカクレクマノミは性転換をします。また、爬虫類(コモドオオトカゲ)では処女懐胎(性交渉無しの妊娠)の例があります。ところが(幸か不幸か!)、哺乳類ではこの可能性は考えられません。胎盤はY染色体の中の遺伝子の指令で作られるため、Y染色体なしでは(つまりオスなしでは)、子孫を残すことはできません。
恐竜全盛の1億6000万年前に、小動物として生き延びるための方策として獲得した胎盤というシステムは、恐竜絶滅後の哺乳類の繁栄を見れば成功だったかもしれません。でも、Y染色体のなかに胎盤をつくる遺伝子を持ってしまったがために、今となっては「死へのキス」となってしまいました。
哺乳類にも全く可能性が無いわけではありません。アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミにはY染色体がありません。それでも子孫を残すことができるのは、精子を作る遺伝子が他の染色体に突然変異でできたため。性を決定する遺伝子も他の染色体にできているのだろうと考えられています。が、これは突然変異であるため、人間にも同じことが起こるのは望み薄です。
さらに悪いことには、人間の精子が特に劣化していることがわかっています。デンマークの調査によると、精子が1ミリリットル中2000万個以下(不妊症とされる)の男性は20%、4000万個以下(不妊予備軍とされる)の男性は40%いることがわかったそうです。そして日本でもほぼ同じであるらしい。人間でこの傾向が見られるのは、一夫一婦制の弊害ではないかと考えられます。乱婚の場合、精子どうしの競争があるため、劣化が抑えられるからです。
精子劣化に対する対策としては、顕微授精という技術があります。しかし、人為的に受精させるので、精子に対する競争圧力が全くかからず、精子劣化に拍車がかかることが懸念されます。
デンマークでは14人に1人が顕微授精によって生まれている…アメリカでは、精子バンクを利用する例も増えている…男として複雑です。
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