あるお父さんの足に住み着いた白癬菌(水虫)。急に活動が活発化して、足の裏以外にも進出。どんどん田虫を作っていきました。お父さんだけでは手狭になってきたので、他の人への移住計画が持ち上がりました。勇敢な白癬菌ガガーリンが選ばれて、一晩だけお風呂のマットに滞在してきました。

翌日、めでたくお父さんの足の裏に帰還したガガーリンの報告で、お父さんは単身赴任なので他の家族に移住することは難しいことがわかりました。それともうひとつ、ガガーリンはお父さんの足に飛び移る際にお父さんの顔を見たのです。そのときの様子を語った言葉が名言として、白癬菌たちの歴史に残りました。「お父さん(の顔色)は青かった!(お風呂上りだというのに!)」

白癬菌たちは、かけがえのないお父さんが病気らしいことに気付きました。僕たちは、なるべく贅沢な暮らしを我慢して、継続可能な社会を築いていこう!限りあるお父さん、かけがえのないお父さんを生かさず殺さず、大切に使っていこう。お父さんにやさしい水虫になろう!・・・念のため断っておきますが、これはフィクションです。

 35億年前にシアノバクテリアという生物が地球に大量発生したそうです。この細菌が光合成を行ってくれたお陰で、それから10億年の間に大気中の酸素濃度が現在と同じ程度になりました。私たちのように酸素を消費する生き物には住みよい環境になったのですが、嫌気性の細菌にとってはとんでもない環境破壊だったわけです。

 それを考えると、環境破壊という言葉も相対的であることがわかります。我々人類の環境破壊活動は、今も地球上に遍在しているシアノバクテリアの目(?)には大気浄化と映るかもしれません。人類がエコロジーに成功すれば人類の歴史が長く続くことになるでしょうし、失敗すれば他の生物が取って代わるだけのことでしょう。

 地球⇒お父さん、人類⇒白癬菌という対比でいくなら、お父さんの足の裏にいる白癬菌が減って、ブドウ球菌とかが増殖するだけのことです。人類の繁栄が続くことが地球にとって喜ばしいことなのかどうか、地球にやさしいことなのかどうか、難しいところだと思います。

 エコロジーとは、人類の種族保存の欲求に他ならないのでありまして、「地球のため」などと言うのはおこがましい話です。「ひとりの人間の命は地球よりも重い」という迷言もありますが、「一匹の白癬菌の命がお父さんよりも重い」と言われたら、怒らないお父さんはいないと思います。人間は、自然に対して、もっと身の程を弁えるべきです。

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