★もみほぐ師
11月の客単価(実績)
硬いべ?の人
前回は「私、硬いんですかね?」と尋ねられた場合について書いた。これと似て非なるのが「硬いべ?」と尋ねられた場合。
日本語に直すと「硬いでしょ?」という意味になるが、硬くないなんて言わせないぞというニュアンスが強い。
この場合、例えば肩ならば「肩こりのプライド」が隠れている。硬いのは一生懸命生きてきた証なのである。だから、そんなに凝っていないと思っても、「いや、硬いなんてもんじゃないですね!」と言わなければならない。
「そんなでもないですよ」と言っても安心してくれないし、「さっきの人の方が硬いですよ」と言おうものならプライドを傷つけてしまう。私の仕事はコリをほぐすことであって、鼻をへし折ることではない。
人間は自分の平静を保つために自動的に合理化を行う。この場合の最も簡単な合理化の手法は「この治療師はコリが分からない奴だ」というレッテルを貼ることである。評判を落としてまで真実を伝える必要はない。
旅館の一室に呼ばれたことがあった。80歳を越えた女性たちが5,6人。小学校時代の同級生。彼女たちの語らいを聞きながら、一人ずつ施術を行った。
語らっている人たちの一人が「あ、薬飲むの忘れた」と言って、薬の袋を出した。「あ、私も」と言って別の人も。結局、皆が薬をテーブルに並べた。こうなると、「病気のプライド」が出現する。
「あんた、それしか飲んでないの?私はこんなに飲まないといけないよ」
「その薬はこの前まで私も飲んでた。でも、効かなくなったからもっと強いのに変えてもらった」
「この痛み止めで治まってるんだったら、大したことないよ。私なんか…」
かつて机を並べて競い合った仲間が、薬を並べて競い合う。当然、老いた体を並べても競い合いが始まる。
「あんたは背中がまっすぐでいいね」
「あんたは膝がまっすぐじゃないか!」
「コロコロ太ってるね。私なんか体重が減ってきたよ」
「私は痩せられなくて困ってるの!」
そしてついに面倒な事態が発生する。
「先生、この人と私、どっちが凝ってる?」
この場合の最も簡単な対処法は部門別表彰。
「こちらの方は右肩がひどく凝ってますが、お客さんは左肩ですね」
右背中、左背中、右腰、左腰、右臀部、左臀部、右膝、左膝、…。部門はいくらでも設定できるし、それぞれのお客様に小さな差異は必ず見つけることができるし、しかも部門ごとに賞品を準備する必要もない。
それぞれに「たった一つだけの花」を持たせれば良いのである。
日本語に直すと「硬いでしょ?」という意味になるが、硬くないなんて言わせないぞというニュアンスが強い。
この場合、例えば肩ならば「肩こりのプライド」が隠れている。硬いのは一生懸命生きてきた証なのである。だから、そんなに凝っていないと思っても、「いや、硬いなんてもんじゃないですね!」と言わなければならない。
「そんなでもないですよ」と言っても安心してくれないし、「さっきの人の方が硬いですよ」と言おうものならプライドを傷つけてしまう。私の仕事はコリをほぐすことであって、鼻をへし折ることではない。
人間は自分の平静を保つために自動的に合理化を行う。この場合の最も簡単な合理化の手法は「この治療師はコリが分からない奴だ」というレッテルを貼ることである。評判を落としてまで真実を伝える必要はない。
旅館の一室に呼ばれたことがあった。80歳を越えた女性たちが5,6人。小学校時代の同級生。彼女たちの語らいを聞きながら、一人ずつ施術を行った。
語らっている人たちの一人が「あ、薬飲むの忘れた」と言って、薬の袋を出した。「あ、私も」と言って別の人も。結局、皆が薬をテーブルに並べた。こうなると、「病気のプライド」が出現する。
「あんた、それしか飲んでないの?私はこんなに飲まないといけないよ」
「その薬はこの前まで私も飲んでた。でも、効かなくなったからもっと強いのに変えてもらった」
「この痛み止めで治まってるんだったら、大したことないよ。私なんか…」
かつて机を並べて競い合った仲間が、薬を並べて競い合う。当然、老いた体を並べても競い合いが始まる。
「あんたは背中がまっすぐでいいね」
「あんたは膝がまっすぐじゃないか!」
「コロコロ太ってるね。私なんか体重が減ってきたよ」
「私は痩せられなくて困ってるの!」
そしてついに面倒な事態が発生する。
「先生、この人と私、どっちが凝ってる?」
この場合の最も簡単な対処法は部門別表彰。
「こちらの方は右肩がひどく凝ってますが、お客さんは左肩ですね」
右背中、左背中、右腰、左腰、右臀部、左臀部、右膝、左膝、…。部門はいくらでも設定できるし、それぞれのお客様に小さな差異は必ず見つけることができるし、しかも部門ごとに賞品を準備する必要もない。
それぞれに「たった一つだけの花」を持たせれば良いのである。
硬い人
「私、硬いんですかね?」と、同じ日に2人のクライアントから聞かれた。
1人目の男性は、整形外科のリハビリで、担当の理学療法士から毎回言われるらしい。「体、硬いですね。」
2人目は女性。美容室で髪を洗う時にサービスで肩を揉んでくれるのだが、その度に「肩が硬いですね。指が入らないですよ。」
体が硬いのは余り良い意味には取られない。だから、毎回言われたら、かなり気になるだろう。
しかし、これは余り意味が無いと私は思う。もともと硬い人、もともと軟らかい人というのがあると思うから。単純に、硬いから凝っているとか、軟らかいから凝っていないとは言えないのである。
かく申す私も、クライアントに「硬いですね」と毎日のように言っている。しかし、他人と比べてはいない。「右肩と比べると左肩は硬いですね」とか「いつもと比べると今日は腰が硬いですね」とか、飽くまでもそのクライアントの中だけの比較である。
これは体温や血圧についても言えると思う。その人の健康状態を見る場合、他の人のそれと比較するよりも、その人自身の過去の数値と比較した方が参考になるはずだ。
結局、私はこの二人に同じ言葉を返した。
「そうですね。他の人たちと比べれば、硬い方かもしれませんね。でも、この前の辛い時と比べたら今日はそんなに硬い方じゃないですよ。今日は楽でしょう?」
言葉がコリを呼ぶ場合もある。言葉がコリをほぐす場合もある。
1人目の男性は、整形外科のリハビリで、担当の理学療法士から毎回言われるらしい。「体、硬いですね。」
2人目は女性。美容室で髪を洗う時にサービスで肩を揉んでくれるのだが、その度に「肩が硬いですね。指が入らないですよ。」
体が硬いのは余り良い意味には取られない。だから、毎回言われたら、かなり気になるだろう。
しかし、これは余り意味が無いと私は思う。もともと硬い人、もともと軟らかい人というのがあると思うから。単純に、硬いから凝っているとか、軟らかいから凝っていないとは言えないのである。
かく申す私も、クライアントに「硬いですね」と毎日のように言っている。しかし、他人と比べてはいない。「右肩と比べると左肩は硬いですね」とか「いつもと比べると今日は腰が硬いですね」とか、飽くまでもそのクライアントの中だけの比較である。
これは体温や血圧についても言えると思う。その人の健康状態を見る場合、他の人のそれと比較するよりも、その人自身の過去の数値と比較した方が参考になるはずだ。
結局、私はこの二人に同じ言葉を返した。
「そうですね。他の人たちと比べれば、硬い方かもしれませんね。でも、この前の辛い時と比べたら今日はそんなに硬い方じゃないですよ。今日は楽でしょう?」
言葉がコリを呼ぶ場合もある。言葉がコリをほぐす場合もある。
授乳中に見ていたもの
あるクライアントと、スマホの話になった。どこに行っても、最近はみんなスマホを見ている。気味が悪いと。子どもがうるさいからスマホを渡してゲームさせているお母さんを見かけた。スマホに子守をさせている。
このクライアントは米寿を迎えた女性。携帯は持っているが、ガラケー。でも、気骨のある方なので、臆することなく必要な時はガラケーを出して使っている。
最近は授乳中のお母さんがスマホでゲームやLINEをやっている話をしたら、御存知なかったようでとても驚いていた。
「あんな可愛いものを抱いていながら、それを見ないの?」
自分にとって最大の存在である母親が、自分を見つめず、違うところを見つめている。赤ちゃんの心の成長に良いわけがない…と、ここまではよくある評論。
「私は子どもの目に映る自分の顔を見ていましたよ。」
これは私も初めて聞いた。まあ、じっと目を見つめていれば自分の顔も映って見えるだろうよ、と言ってしまえば身もふたもない当たり前なことなのだが…。
何だか、ジーンときた。
赤ちゃんも母親の目を見ていて、視覚を獲得していくにしたがって、母の眼に映る自分の姿も確認しているに違いない。母子の目が、お互いの姿を反射し合っている。それは、信頼のキャッチボールでもあり、愛情のキャッチボールでもある。
これは母乳で育てる場合に限られたことではない。哺乳瓶ででもできる。つまり父親もできる。
聞けば、クライアントは曾孫が産まれたばかりだった。
このクライアントは米寿を迎えた女性。携帯は持っているが、ガラケー。でも、気骨のある方なので、臆することなく必要な時はガラケーを出して使っている。
最近は授乳中のお母さんがスマホでゲームやLINEをやっている話をしたら、御存知なかったようでとても驚いていた。
「あんな可愛いものを抱いていながら、それを見ないの?」
自分にとって最大の存在である母親が、自分を見つめず、違うところを見つめている。赤ちゃんの心の成長に良いわけがない…と、ここまではよくある評論。
「私は子どもの目に映る自分の顔を見ていましたよ。」
これは私も初めて聞いた。まあ、じっと目を見つめていれば自分の顔も映って見えるだろうよ、と言ってしまえば身もふたもない当たり前なことなのだが…。
何だか、ジーンときた。
赤ちゃんも母親の目を見ていて、視覚を獲得していくにしたがって、母の眼に映る自分の姿も確認しているに違いない。母子の目が、お互いの姿を反射し合っている。それは、信頼のキャッチボールでもあり、愛情のキャッチボールでもある。
これは母乳で育てる場合に限られたことではない。哺乳瓶ででもできる。つまり父親もできる。
聞けば、クライアントは曾孫が産まれたばかりだった。
12月の価格
10月の客単価(実績)
昔は男が強かったの?
小学校で女性参政権について習った時のことだったと思う。娘は、帰宅するなり私に尋ねた。
「ねえ、パパ!昔は男が強かったの!?」かなり驚いた様子。
「そうだよ。男尊女卑と言ってね…」と、いろいろ説明したが、どうにも納得してもらえない。全く想像がつかないらしい。
不思議がる娘の様子を見ているうちに、自分もそんな時代があったのか疑わしくなってきた。男が威張り散らしていた時代なんて、今では全くリアリティがない。
仕事先で聞いた話である。奥さんがいくつかの不定愁訴で悩んでいて、主治医に相談してもなかなか良くならない。何か病気が隠れているかもしれないというので、大きな病院でいくつかの精密検査を受けることになった。検査当日は旦那さんが引率した。
最初の検査の受付で、「どうせなら旦那さんもすれば良いのに」というような冗談を言っているうちに、夫婦どっちが先に逝くか、みたいな話になった。すると、その受付の女性が、自分の母親が父親を残して先に逝ってしまった話を始めた。男が独り残されると、とても大変だという内容。これが、旦那さんへの最初の一撃だった。
帰りに、この夫婦は、小さな食堂で夕食を済ませることにした。入ってみると、客がいない。声をかけても店の人が出てこない。諦めて店を出ようとしたところに、店の主人が現れた。営業中だと言うので注文してみると、早速「食材が無い。さっき買って来るの忘れた」。そしてグチが始まった。
2年前に奥さんを亡くした。それから、何をやってもうまくいかない。生きている時は妻の悪いところばかり目に付いたのに、いなくなってみると思い出すのは良いところばかり。自分が先に逝けば良かった。なかなか、迎えに来てくれない。
食材が揃っているメニューをオーダーし、グチを聞きながらの食事を終えて、夫婦は食堂を出た。
立て続けに奥さんが先に亡くなる話を聞いたにもかかわらず、衝撃を受けたのは旦那さんの方だった。家についても放心状態。それを見て、奥さんはただただ愉快。「病気が見つかったら逝くだけだから(笑)。」
私も聞きたくなった。昔は本当に男が強かったの?
「ねえ、パパ!昔は男が強かったの!?」かなり驚いた様子。
「そうだよ。男尊女卑と言ってね…」と、いろいろ説明したが、どうにも納得してもらえない。全く想像がつかないらしい。
不思議がる娘の様子を見ているうちに、自分もそんな時代があったのか疑わしくなってきた。男が威張り散らしていた時代なんて、今では全くリアリティがない。
仕事先で聞いた話である。奥さんがいくつかの不定愁訴で悩んでいて、主治医に相談してもなかなか良くならない。何か病気が隠れているかもしれないというので、大きな病院でいくつかの精密検査を受けることになった。検査当日は旦那さんが引率した。
最初の検査の受付で、「どうせなら旦那さんもすれば良いのに」というような冗談を言っているうちに、夫婦どっちが先に逝くか、みたいな話になった。すると、その受付の女性が、自分の母親が父親を残して先に逝ってしまった話を始めた。男が独り残されると、とても大変だという内容。これが、旦那さんへの最初の一撃だった。
帰りに、この夫婦は、小さな食堂で夕食を済ませることにした。入ってみると、客がいない。声をかけても店の人が出てこない。諦めて店を出ようとしたところに、店の主人が現れた。営業中だと言うので注文してみると、早速「食材が無い。さっき買って来るの忘れた」。そしてグチが始まった。
2年前に奥さんを亡くした。それから、何をやってもうまくいかない。生きている時は妻の悪いところばかり目に付いたのに、いなくなってみると思い出すのは良いところばかり。自分が先に逝けば良かった。なかなか、迎えに来てくれない。
食材が揃っているメニューをオーダーし、グチを聞きながらの食事を終えて、夫婦は食堂を出た。
立て続けに奥さんが先に亡くなる話を聞いたにもかかわらず、衝撃を受けたのは旦那さんの方だった。家についても放心状態。それを見て、奥さんはただただ愉快。「病気が見つかったら逝くだけだから(笑)。」
私も聞きたくなった。昔は本当に男が強かったの?