先日、仕事先でテレビを見ていて、「Tレグ細胞」と食物アレルギーの話がとても興味深かった。かねてから疑問に思っていた謎が解けたからである。

・アレルギーに気を付けているお母さんの子供ほど食物アレルギーになりやすい?
かねてから私は「アレルギーに気を付けているお母さんの子供ほど食物アレルギーになりやすいのではないか?」という疑問を持っていたのだ。

最初は、お子さんが食物アレルギーになったから、そのお母さんは食物アレルギーに気を付けているのだと思っていた。でも、よくよく聞いてみると、順序が逆なのだ。お子さんが食物アレルギーになる前から細心の注意を払っていたのに…というケースがほとんどだったのだ。

・Tレグ細胞は食物アレルギーのブレーキ
さて、Tレグ細胞とは、食べた物に対してアレルギー反応が起こらないようにブレーキをかける細胞。何度か食べることによって「これは食べ物だから、アレルギーを起こしちゃダメなんだね」と学習していく。

例えば、少しずつ何度か卵を食べているうちに、卵アレルギーのブレーキ(Tレグ細胞)が出来てくる。そうすると、卵アレルギーにならない…というメカニズムになっているらしい。

・食べさせないとTレグ細胞はできない
逆に言うと、食べさせないと食物アレルギーになってしまう、ということだ。

そう考えれば、食物アレルギーに神経質なお母さんの子どもほど食物アレルギーになりやすい、という現象は何ら不思議なことではなくなる。アレルギー予防と真逆のことをしていたわけだから。

・蕎麦屋の子どもの蕎麦アレルギー
ここ山形は蕎麦処なので蕎麦屋さんが多い。そして、蕎麦屋の子どもに蕎麦アレルギーが多いのも何となく気づいていた。蕎麦屋のお母さんが勉強熱心で、我が子が蕎麦アレルギーにならないように敢えて離乳食の段階で蕎麦を食べさせないで育てていたら、蕎麦アレルギーになりやすいはずだ。蕎麦粉に触れる機会は多いだろうから、Tレグ細胞なしの状態で皮膚から蕎麦の成分が頻繁に入ってきたら、免疫系は蕎麦粉に対して厳戒態勢を敷くはずだ。つまり、アレルギー反応が起こる。

・むやみに食べさせれば良いというわけではない
但し、ガンガン食べさせれば良いというものではない。命に係わることでもあるし、完全に解明されているわけでもないようだし。

Tレグ細胞については20年以上前から存在が知られていたようである。食物アレルギーガイドラインで「子どもの食物アレルギーについて、原因である食べ物を全て除去するのではなく、可能な範囲で摂取することを目指す」と大きく方針変更されたのは2016年。しかし、テレビで積極的に分かりやすく取り上げるようになったのは、ここ最近という印象である。

かなり、慎重であることがうかがえる。

・ハチミツは別
慎重にならざるを得ないのは、ハチミツのような例があるからだと思う。昨年3月に生後6カ月の男児が蜂蜜の過剰摂取で死亡といういたましい事件が起きた

1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはいけないことは、私も父親になった時に勉強した。亡くなった男児の親はこれを知らなかったようである。

で、ここで敢えて取り上げて注意喚起しようと思ったのは「乳児に蜂蜜が禁忌なのはアレルギーが理由ではない」からである。昨年のニュースを聞くまでは、私も蜂蜜はアレルギーを起こしやすいからだとばかり思っていた。

蜂蜜がいけないのは、「乳児ボツリヌス症」の危険があるからである。蜂蜜にはボツリヌス菌の芽胞が含まれている場合があり、腸内が未発達な乳児が食べると危険なのである。1歳を過ぎればこの危険は無い。

これはアレルギーとは全く関係が無いので、Tレグ細胞も関係ない。食物アレルギーガイドラインが変更になったからといって、蜂蜜が乳児に禁忌であることは変わりがないのである。

・まとめ
●アレルギーに気を付けているお母さんの子供ほど食物アレルギーになりやすいのではないか?という筆者の疑問が、Tレグ細胞の説明を聞いて氷解した。
●Tレグ細胞はアレルギー反応にブレーキをかける役割。
●Tレグ細胞は食べたことのある食べ物にしかできない。
●食べさせないとブレーキができないので、食物アレルギーになってしまう。
●食物アレルギーガイドラインも「可能な限り食べさせよう」という方向に方針転換した。
●1歳未満児にハチミツを食べさせてはいけないのはアレルギーが理由ではないので、やはり食べさせてはいけない。