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「空海コレクション 1 (秘蔵宝鑰・弁顕密二教論)」(ちくま学芸文庫)「秘蔵宝鑰」(p16〜257)の本論−第一異生羝羊心「(2)異生羝羊心の人間存在と、まとめの詩句」を読みました。

《以下引用(p58)》
強窃二盗は珍財に迷って戮(つみ)を受け、和強両姧(かん)は蛾眉(がび)に惑って身を殺す。四種の口業(くごう)は舌に任せて斧を作り、三箇の意過は心に縦(ほしいまま)にして自(みずか)ら毒なり。無慚無愧(むざんむき)にして八万の罪、ことごとく作り、自作教他(じさきょうた)して塵沙(じんじゃ)の過(とが)常になす。

すべて一一の罪業(ざいごう)、三悪(さんなく)の苦を招き一一の善根(ぜんごん)、四徳の楽に登ることを覚知せず。

あるがいわく、「人は死して気に帰り更に生を受けず」と。かくの如くの類をば断見と名づく。

あるがいわく、「人は常に人たり、畜は常に畜たり。貴賤、常に定まり、貧富恒(つね)に別れたり」と。かくの如くの類をば常見と名づく。

或いは牛狗(ごく)の戒を持(たも)ち、或いは死を恒河(ごうが)に投ず。かくの如きの類を邪見という。邪見外道、その数無量なり。

出要を知らず妄見を祖として習えり。かくの如き等類は皆ことごとく羝羊の心なり。

頌(じゅ)にいわく。四韻(いん)
凡夫は善悪に盲(めし)いて 因果あることを信ぜず
但し眼前の利を見る 何ぞ地獄の火を知らん
羞(は)ずることなくして十悪を造り 空しく神我ありと論ず
執著(しゅうじゃく)して三界(さんがい)を愛す 誰か煩悩の鎖を脱れん
《引用終わり》

冒頭の文章は、昨今多発している凶悪犯罪のことを言っているのかと見まがうほどです。

最後の4行の詩の訳を写します。

《以下引用(p61)》
世のつねの人は善悪の見さかいがつかず 因果の理法が存在することを信じない
ただ目の前の利益を見るだけであるから どうして地獄の火を知るわけがあろう
さまざまな悪業をなして、何ら恥じず 実在の自我の存在をいたずらに主張する
迷いの世界に執われて、それを愛している どうして、煩悩の鎖をのがれることができよう
《引用終わり》

「さまざまな悪業をなして、何ら恥じず 実在の自我の存在をいたずらに主張する」
しっかりと犯罪を犯しておきながら、どんなにこじつけても無罪を主張する…そんな現代人のことを予言しているようです。

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