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「空海コレクション 1 (秘蔵宝鑰・弁顕密二教論)」(ちくま学芸文庫)「秘蔵宝鑰」(p16〜257)の本論−第一異生羝羊心「(1)第一異生羝羊心とは何か」を読みました。

《以下引用(p53)》
異生羝羊心とは何ぞ。凡夫、狂酔して善悪を辯(わきま)えず、愚童、癡暗(ちあん)にして因果を信ぜざるの名なり。凡夫、種種の業を作って種種の果を感ず。身相万種にして生ず。故に異生と名づく。愚癡無智なること、彼の羝羊の劣弱なるに均(ひと)し。故にもってこれに喩(たと)う。

それ生は吾が好むにあらず。死はまた人の悪(にく)むなり。しかれども猶(なお)、生まれ之(ゆ)き生まれ之いて六趣に輪転し、死に去り死に去って三途(さんず)に沈淪す。我を生ずる父母(ぷも)も生の由来を知らず。生を受くる我が身もまた、死の所去(しょこ)を悟(さと)らず。過去を顧みれば、冥冥(めいめい)としてその首(はじめ)を見ず。未来に臨めば、漠漠(ばくばく)としてその尾(おわり)を尋ねず。三辰、頂に戴(いただ)けども暗きこと狗(いぬ)の眼に同じく、五嶽、足を載(の)すれども迷えること羊の目に似たり。日夕(じっせき)に営営として衣食(いいし)の獄に繋(つな)がれ、遠近(おんごん)に趁(はし)り逐(お)って名利の坑(あな)に墜(お)つ。

加以(しかのみならず)、磁石、鋼を吸えばすなわち剛柔、馳せ逐(お)い、方諸、水を招けばすなわち父子相親しむ。父子の親親(しんしん)たる、親の親たることを知らず。夫婦の相愛したる、愛の愛たることをさとらず。流水相続き、飛燄(ひいえん)相助く。徒(いたずら)に妄想の縄に縛られて、空しく無明(むみょう)の酒に酔えり。既に夢中に遇えるが如し。還(かえ)って逆旅(げきりょ)に逢うに似たり。

一(いち)、二(じ)、道(どう)より展生(てんせい)し、万物、三に因って森羅たり、自在よく生(な)し、梵天の所作なりというが如くに洎(いた)っては、未だ生人の本(もとい)を知らず。誰か死者の起りを談ぜん。

遂(つい)にすなわち豺狼狻虎(さいろうさんこ)は毛物(ぼうぶつ)を咀嚼(そしゃく)し、鯨鯢摩竭(げいげいまかつ)は鱗族を呑歠(どんせつ)す。金翅(こんし)、龍を食(は)み、羅刹(らせつ)、人を喫(くら)う。人畜相(あい)呑み、強弱相噉(くら)う。況(いわ)んやまた、弓箭(きゅうせん)、野を亘(わた)れば、猪鹿(ちょろく)の戸(とぼそ)、種を絶ち、網罭(もうよく)、沢を籠(こ)むれば、魚龞(ぎょべつ)の郷(さと)、族(やから)を滅す。鷹隼(ようじゅん)、飛べば鷩鵠(へつこく)、涙(なんだ)を流し、敖犬(ごうけん)、走れば、狐兎(こと)、腸(はらわた)を断つ。禽獣は尽くれども心には未だ飽かず。厨屋(ちゅうおく)には満つれども舌には厭(いと)わず。
《引用終わり》

「我を生ずる父母も生の由来を知らず。生を受くる我が身もまた、死の所去を悟らず。過去を顧みれば、冥冥としてその首を見ず。未来に臨めば、漠漠としてその尾を尋ねず。」は、以前引用しております。

【要旨】の冒頭で、
《以下引用(p55)》
異生羝羊心という心の世界とはどういうものか。本能のままに生き弱肉強食の世界である動物の心が人間存在の根底にはひそむことを明らかにする。
《引用終わり》
と、まとめてあります。

私たちの脳は、魚類から爬虫類、原始哺乳類と、新しい脳を増設する形で進化を遂げています。以前の本能もそのまま受け継いでいるということを忘れてはいけません。

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