「新・人体の矛盾」の「5 肺の起源」を読みました。(小林教室収蔵

ポリプテルスのような古代魚には肺が見られるそうです。発生の段階で、腸管(食道)が膨らんでできるそうですが、それが腹側にできるか背側にできるかで肺かウキブクロかを区別するそうです。魚の段階では両者とも浮力調節機能を主に負っているとのこと。

人間もオギャーと言って、羊水の中から言わば陸上に現れるとき、胎児循環を終了して大人の循環に切り替わります。心臓や肺の血液の流れが劇的に切り替わるわけですが、これが両生類以降の循環だそうです。ただ、両生類の段階では肺呼吸よりも皮膚呼吸がメーンであり、柔らかい皮膚を保つため水辺を離れることはできません。

厚いウロコを獲得した爬虫類は、肋間筋による積極的な呼吸法(胸式呼吸法)を行えるようなっています。ただし、カメは肋骨と甲羅が一体化しているので、手足の出し入れや腹の筋肉を使って肺を動かしています。

鳥類は、高い体温を維持し、活発な活動をしますから、気嚢を持った特別な構造になっています。空気の流れが一方向になるので、小型ながら高効率の呼吸器です。

哺乳類は大きな肺を持ち、さらに横隔膜という強い筋肉による呼吸(腹式呼吸)も行えるようになっています。腹式呼吸は自律神経を調整する働きがあるということで座禅などでも行われます。横隔膜を支配する神経は頚椎の上部から出ているのに対して、肋間筋を支配する神経は頚椎の下部から出ているため、頚部の脊髄損傷では胸式呼吸ができなくなっても腹式呼吸はできるというケースがあると聞いたことがあります。哺乳類だけができる呼吸法として、大切にしたいものです。

サメには肺もウキブクロも無く、浮き沈みをヒレの翼力に頼っているため、静止すると沈んでしまうというのは面白いです。肺をもつ我々が泳げないなんて言ってはいけませんね。

《つづく》