「空海の風景」(中公文庫)
「『空海の風景』を旅する」の「第十章 高野山」を読みました。
当時NHK番組制作局教養番組部ディレクターの森下光泰さんの文章です。
《以下引用》
…空海が始めたこの大事業の進み方は遅々たるものであったようだ。この当時、朝廷や有力貴族の支援なしに私寺建立を進めるというのは、非常に困難なことで、とりわけ空海が目指したものは、その規模において、突出していた。『高野雑筆集』に残る空海の書簡では、釘を恵んでほしいという依頼や、米油をもらった感謝などが綴られ、金銭的理由によって工事が滞っていたことが推測される。空海は地元の豪族や、庶民に近い人々に寄進を頼まざるをえなかった。
…《引用終わり》
公費を使って東寺を密教化する一方で、高野山のプロジェクトは進められました。国に頼ることはお金の工面をしなくてもいいという点では楽でしょうが、自分の好きなように設計できないという不満等が残るでしょう。
公費とは、有無を言わさず払わされたお金です。支払った人たちは何に使われるのか分かりません。それに対して、寄進とは、寺の完成を願う人々が支払ったお金です。後者の方が理想であることは明らかです。
《以下引用》
…空海の思想は難解である。それに対して、奥の院を訪れる人たちの信仰はきわめて単純だ。空海その人を信仰の対象とするのである。それは空海の思想からは、大きく変質していると考えていたが、実はそれほど外れていないようにも思えてきた。そもそも空海は、文字による密教理解を憎んでいた。修行の実践が必要だということは、換言すれば、感覚的にみずからが大宇宙の一部であり、同時にそのすべてである密教思想の核心を、実感することが重要だということなのではなかろうか。目指すべきは、大宇宙の真理たる大日如来そのものになることなのである。
…《引用終わり》
《つづく》
「『空海の風景』を旅する」の「第十章 高野山」を読みました。
当時NHK番組制作局教養番組部ディレクターの森下光泰さんの文章です。
《以下引用》
…空海が始めたこの大事業の進み方は遅々たるものであったようだ。この当時、朝廷や有力貴族の支援なしに私寺建立を進めるというのは、非常に困難なことで、とりわけ空海が目指したものは、その規模において、突出していた。『高野雑筆集』に残る空海の書簡では、釘を恵んでほしいという依頼や、米油をもらった感謝などが綴られ、金銭的理由によって工事が滞っていたことが推測される。空海は地元の豪族や、庶民に近い人々に寄進を頼まざるをえなかった。
…《引用終わり》
公費を使って東寺を密教化する一方で、高野山のプロジェクトは進められました。国に頼ることはお金の工面をしなくてもいいという点では楽でしょうが、自分の好きなように設計できないという不満等が残るでしょう。
公費とは、有無を言わさず払わされたお金です。支払った人たちは何に使われるのか分かりません。それに対して、寄進とは、寺の完成を願う人々が支払ったお金です。後者の方が理想であることは明らかです。
《以下引用》
…空海の思想は難解である。それに対して、奥の院を訪れる人たちの信仰はきわめて単純だ。空海その人を信仰の対象とするのである。それは空海の思想からは、大きく変質していると考えていたが、実はそれほど外れていないようにも思えてきた。そもそも空海は、文字による密教理解を憎んでいた。修行の実践が必要だということは、換言すれば、感覚的にみずからが大宇宙の一部であり、同時にそのすべてである密教思想の核心を、実感することが重要だということなのではなかろうか。目指すべきは、大宇宙の真理たる大日如来そのものになることなのである。
…《引用終わり》
《つづく》
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