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「仏教入門」(東京大学出版会版)
「十章 仏教の歴史」の前半を読みました。

ブッダの入滅以後約100年間は教団組織の統一は保たれたが、拡張に伴い、意見の対立が生じ、細分化が起こった。これ以前を原始仏教、以後を部派仏教と言う。

各教団のインド各地での発展は、紀元前3世紀前後のマウリヤ王朝のインド統一と三代目アショーカ王による保護の影響もある。

クシャーナ王朝のカニシカ王(128年即位)はアショーカに劣らぬ熱心な仏教信者で、北インドを領土としガンダーラに都したが、説一切有部を保護した。

部派仏教は教義の確立という点では大きな功績を残したが、その主体は出家の修行者たちで、国王の保護のもとに安定した生活を送り、学問や修行に専念できたところから生まれた。しかし教義の煩雑化に対し、信者からの反発や出家者内部での反省が起こり、新しい宗教運動が起こった。

彼らは自らの手でその思想を表明する道具として新しい経典を編纂した。その道を万人の救済を目指す広い乗り物と言う意味で「大乗」と名づけ、在来の部派仏教を限られた出家者だけの道と言う意味で「小乗」と貶称した。

紀元前一世紀以降、『般若経』『法華経』『華厳経』等の大乗経典の中で、しだいに発展していった。教理上の特色は、「空」思想がその基本にあり、また仏の絶対視(法身)と、仏のはたらきとしての「般若」と「方便」(慈悲行)の強調とを挙げることができる。信仰の仏教としての大乗の典型的な姿は『阿弥陀経』などの浄土教に見られる。

紀元後2世紀に南インドに生まれたナーガールジュナ(龍樹)と、5世紀ころにグプタ王朝治下で活躍したヴァスバンドゥ(世親)の二人によって教理が確立され、組織化された。

ヴァスバンドゥの系統は大乗仏教の主流として栄えたが、この瑜伽行派の唯識説は心の分析を主としながら、有部の影響を強く受けてアビダルマ的傾向を持ち、煩瑣な教学に変っていった。

これに対抗して、6世紀にはナーガールジュナの思想を直接受ける中観派が台頭し、両者の間で華々しい論争が生まれるようになる。

大乗仏教の思想の流れは、このほか法華一乗の教えを発展させた『勝鬘経』『涅槃経』に見られる「如来蔵」や「仏性」の教えがあり、その組織化された論書として『宝性論』や『大乗起信論』がつくられたが、学派の系統としては主に瑜伽行派の人々の手に属していた。

大乗仏教の二学派(中観・瑜伽行)が学問仏教と化していくのと併行して、密教が台頭して、インド仏教の主流を占めるようになる。

《つづく》