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「如来蔵系経典」(中公文庫版)
「華厳経如来性起品」の「六 如来の心の生起――如来出現の第四相」を読みました。

如来の心の生起をどう理解すればいいですか?という如来性起妙徳菩薩の問いに、普賢菩薩が答えます。

第一の比喩
すべての所作は虚空に依存して配置されるが、虚空にはよりどころがないように…

如来の知恵に依存して、世間的・超世間的のすべての知識が配置されるが、如来の知恵にはよりどころがない。

第二の比喩
真理の領域において、一切の仏弟子の道を行ずるものたちでさえ解脱し、一切の独力で覚る道を行ずるものたちでさえ解脱し、一切の菩薩もまた出現するが、真理の領域には増減がないように…

如来の知恵に依存して、世間的・超世間的なすべての知識が確立し、一切の業と修行もまた確立するが、如来の知恵には増減がない。

第三の比喩
四大州と付属する小島は、大海と相接しているので、どこであれ水が湧き出ているが、大海にはどこに水を出そうなどという分別はないように…

如来の知恵の大海は、考えたり、構想したりせず、順序を決めて働くわけではないのに、衆生たちの心や行為の差異によって、如来の知恵の光明の差異が出現するのである。

第四の比喩
大海中の四種の宝珠の威力で大海に宝が出現するが、この宝珠は龍王の庫蔵に収まっているため大衆には見えないように…

如来の知恵も、如来の法の庫蔵(如来蔵)に安置されているから、薄幸の衆生たちには見えない。菩薩のような生活と、菩薩の知恵の光明によってのみ手に入れることができる。

第五の比喩
大海中の四種の宝珠の大力と大威光が大海の増減を防いでいるように…

如来の知恵も、菩薩たちが目的を追求すれば、法の力を断つ大波を完全に除滅し、広大な般若の知恵は普く照らし出し、如来との平等性を獲得する。もしそれがないと言うなら、誰も覚るものはいなくなり、理に合わないことである。

第六の比喩
底なる基盤からはじめて輪廻生存の最高の位置にいたるまでの欲・色・無色の三界のすべては、無我なる虚空の世界に完全に依存して存在する。しかし虚空にはなんら高低はないように…

声聞の知恵も、独覚の知恵も、菩薩の知恵も、有為において働く知恵も、無為において働く知恵も、あるかぎりのすべてはこれ、如来の知恵という虚空に依存し、そこから生ずる。如来の知恵の虚空によって全ては浸透されており、如来の知恵には禍も楽ならざるものもないが、種々さまざまの知恵が成就している。

第七の比喩
雪山の頂には大威光をもつ最勝の薬樹「根がまだ完成していない」があって、その威光と力によりジャンブ大陸の全ての優れた樹が生ずるように…

如来の知恵の大薬王「根がまだ完成していない」も、前世における深い宗教心と大悲心によって、堅固な根をもって生まれる。行によって菩提が生じ、菩提が行を生む。心や意(おもい)の平等をそなえるものには仏の知恵が生ずる。

第八の比喩
火によって世界が破壊される劫が到来したとき、激しい劫火が生じて燃える。ある人が草の束を積んだとしても燃えないはずがないように…

その火の塊の中で、草の残滓は少しは燃えないで残ることも有り得る。如来の知恵によれば、三世の衆生たちは、心冷たきもの、きわめて冷たきもの、法がすっかり凍りついてしまったものですら、だれでも如来の心に入れられないものはない。如来たちは差別なき知恵を心に抱いている。

第九の比喩
世界の壊れる劫のとき「解放」の風が起こり、それは鉄囲山もスメール山も吹き散らす。吹き散らしたものを戻す他の大風がなければ、無量の諸国土は全て壊滅するように…

如来たちの大風は、菩薩の煩悩を吹き払う。さらに「巧みな方便によって正しく保持する」という如来たちの知恵の大風の力によって、その位から超え出て、如来の位に上がる。

第十の比喩
たとえば、三千大千世界と同じ大きさの大画布(経巻)があって、三千大千世界が順序どおり完全に描かれているとしよう。この大画布が極小なる一原子の粒子の中に収められる。同様に、全ての極小なる原子の粒子の中に、残りなく、一つ一つ、同様の大画布が一枚ずつ入っている。そのとき、ひとりの知恵優れた男が、大画布が原子の中に収まっていても、衆生の誰の役にも立たないことに気づく。そして、微細な金剛杵をもって原子の粒子を打ち砕き、大画布を取り出すように…

如来の知恵も、全ての衆生の意識の流れの中に普く浸透している。しかし価値観の転倒した愚者たちはそれに気づかない。如来は聖道を説いて、彼らの想念の作り出した一切の束縛を除去し、利益する。

密教教理の基本が華厳と近いと言われる理由が、少し分かってきたような気がします。

《つづく》