「本当」は理想と現実の間を行き来する…

一人の男がガンで入院していた。
この男はガン告知を受けている。
ガンなんかにならなかったら…と男は毎日考えていた。
今ごろ、俺は手掛けていた大きなプロジェクトを完成させている頃だった。
ガンなんかにならなかったら…あいつに俺のプロジェクトを横取りされるようなことはなかった。
本当だったら…俺はこんなところにいなかったんだ!
本当の俺、それは理想の俺。

その隣に別の男がガンで入院していた。
この男はガン告知を受けていなかった。
ガンじゃないんだろうか…と男は毎日考えていた。
二人で医師の話を聞いてから、妻だけが残るように言われた。
ガンじゃないんだろうか…その後のあいつの、何か重い悲しみを隠したような不自然な笑顔。
本当は俺は…ガンなんじゃないだろうか!?
本当の俺、それは現実の俺。

告知を受けた男にとっては、ガンでない自分が「本当」の自分である。
告知を受けていない男にとっては、ガンである自分が「本当」の自分である。
「本当」は理想と現実の間を行き来する…
《つづく》

一人の男がガンで入院していた。
この男はガン告知を受けている。
ガンなんかにならなかったら…と男は毎日考えていた。
今ごろ、俺は手掛けていた大きなプロジェクトを完成させている頃だった。
ガンなんかにならなかったら…あいつに俺のプロジェクトを横取りされるようなことはなかった。
本当だったら…俺はこんなところにいなかったんだ!
本当の俺、それは理想の俺。

その隣に別の男がガンで入院していた。
この男はガン告知を受けていなかった。
ガンじゃないんだろうか…と男は毎日考えていた。
二人で医師の話を聞いてから、妻だけが残るように言われた。
ガンじゃないんだろうか…その後のあいつの、何か重い悲しみを隠したような不自然な笑顔。
本当は俺は…ガンなんじゃないだろうか!?
本当の俺、それは現実の俺。

告知を受けた男にとっては、ガンでない自分が「本当」の自分である。
告知を受けていない男にとっては、ガンである自分が「本当」の自分である。
「本当」は理想と現実の間を行き来する…
《つづく》
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