ある御客様の御宅に伺ったときに、柿を4つに(十文字に)切って干しているのを見つけました。網戸のようなものに広げて、まるで梅干のように。普通は一個丸ごとを紐で吊るして干しますから、珍しくて目に留まりました。丸ごと干してから切ると中身がドロッと出てきますから、切ってから干した方が料理しやすいし、食べやすいし、揉まなくていいから楽だということでした。

 その後、別の御宅にお邪魔しましたら、90歳になる御婆ちゃんが、

「干し柿をむいて肩が凝った」
とおっしゃっていたので、早速4つに切って干す話をしました。そうしましたら、とても興味を持たれまして、

「4つに切るって言ってもよく分かんないな」
と言って、ナイフと柿を一個持ってきました。

「ちょっとやってみて」
「!」
私も意外な展開に驚きながら、柿をむいて十文字に切って見せました。

「ほう!これはいいことを聞いた。今年の柿はもう終わったから、来年試さないとね」とおっしゃいました。この気持ちが長生きの秘訣なんだなぁと私も関心しました。そして、その次の一言が良かった。

「また一年、死ねなくなった。」
 あれから二年。「あなたから教わった方法はとっても重宝だよ」と先日、言って下さいました。