トトガノート

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Tag:般若三蔵

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「13.初転法輪へ」を読みました。

帰国し、大宰府滞在を経、和泉国の槇尾山寺に止まるまでの期間について、考察しています。

《以下引用》
…このときの詩が、私が空海の詩文に接した最初のものである。…七言絶句、上声篠韻。

閑林独坐す 草堂の暁
三宝の声  一鳥に聞く
一鳥声あり 人心あり
声心雲水  倶に了了

…槇尾山寺の空海が何を沈思黙考していたのか、それはわからない。しかし、空海六十二年の生涯をいろいろ眺めまわして比較してみると、謎の七年間を除けば、結局はこの山中の空海が一番だったと思う。

…語る相手といえば老境の律気な阿刀大刀と、それに空海をひそかに訪ねてきたであろう奈良の僧たち、修行者たちだけである。奈良仏教者たちは空海に期待を寄せていた。最澄の痛烈な南部仏教批判をはねかえせるのはいまや空海ただ一人であったからだ。

しかし山中の空海はまだそうした現実にまみれようとはしていない。それらにたいするひとつの「超越的な位置」を確立しようとするだけの時期である。これは空海の存在学の確立期であったろう。
《引用終わり》

この山中で、壮大な体系が構築されていきます…

《つづく》

空海の夢
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「12.長安の人」を読みました。

空海の長安での生活について、松岡さんが考えを列挙しています。
《以下引用》

(4)密教は、すでにのべたように不空の黄金時代が終わり、一行から恵果の時代に進んでいた。空海は当初からこの線を狙っていたのだが、あえて四ヶ月を費やして動静を読む一方、「長安に空海あり」の噂が青龍寺に過熱する日を待っていたふしがある。
そんな空海にさまざまな指示を与え、方針指導をしたのは般若三蔵である。一方、漢人として初めての金胎両部の付法を受けた恵果はこれを門人に伝えようとしていたが、恵果が両部を授けた唯一の門人であった義明はちょうどこの前後に死の床についてしまった。恵果は義明の代わりを探さなければならなかった。空海はそうした情報を般若三蔵からも入手しただろう。
《引用終わり》

般若三蔵の名は、司馬遼太郎の『空海の風景』にも何度となく出てきておりますが、このブログでは取り上げていませんでした。

《以下引用》
…般若三蔵とは、北インドはカシミールの人である。…二十三歳でナーランダー寺院に入り仏教を究めた後、南海の波濤を越えて広州から唐に入った般若三蔵は、…長安にとどまって訳経布教に従事した。『宋高僧伝』によれば、貞元二年(786)、『六波羅蜜経』七巻を訳出したものの意義通ぜず、二年後に十巻に改訳、ついで『大乗本生心地観経』や今日なおわれわれが親しむ『般若心経』を漢訳し、このころ南インドから『華厳経』入法界品の梵本がもたらされると、二年をついやしてこの翻訳にあたったとある。
これが有名な「四十華厳」であった。
正式名を『大方広仏華厳経』という。…

空海はその博覧の般若三蔵に師事した。当然に新訳華厳の一部始終に目を通すか、その奥義を口頭で聞かされたにちがいない。
《引用終わり》

般若三蔵から受けた影響はかなり大きいようです。

《以下引用》
般若三蔵については、日本に渡ろうとしていたという話もある。老齢の般若がこれをはたせなかったのはやむをえないところだろうが、その熱情がおそらくは空海を動かした。なぜ、インドからはるばる来て二十余年を布教訳経に努めた賢人が日本などにおもむこうとするのか、と空海はおもったろう。そしてしばらくしてその本意を見抜いたにちがいない。もはや唐土には真の仏教が実る可能性が少ないのではないか。般若三蔵ほどの僧が親しみ慣れた唐土を去る決意をしているのなら、自分が留学生として二十年をこの国に送ることはまったくの無駄ではないか。
むろん空海は最初から留学生としての二十年をあたら長安についやす気などなかったであろうが、しかしどこで切り上げるのか、何を成果とするのか、また日本に帰るよりも唐にいたほうがより充実した日を送れるかもしれない…といった迷いを払拭する強烈なトリガーが必要でもあったろう。私にはそのトリガーが般若三蔵の日本布教の大企図だったようにおもわれる。
《引用終わり》

司馬遼太郎の文章を読むと、なぜ長安に留まらなかったのか?という疑問は強く残ります。が、上の文章を読むと納得できます。

語学の面でも、般若三蔵が空海に与えた影響は大きかったことでしょう。

《つづく》
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