トトガノート

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「新・人体の矛盾」の「8 毛根をさぐる」を読みました。(小林教室収蔵

鼻と口の間には口蓋という仕切りがありますが、トリやヘビにはこれが無いのだそうです。自分たちの構造が当たり前だと思ってますから、ちょっとビックリです。

このような構造を二次口蓋と言うそうですが、これを持っているのは哺乳類だけ。このおかげで、鼻腔は呼吸のための専用通路となり、吸気で脳の冷却を行うと同時に肺に行くまでに暖められるという熱交換が行われています。パソコンも頭脳の役割を果たすCPUの発熱を冷やすために送風口がありますし、車のラジエターも鼻に似ています。

これは逆に言えば、発熱に悩む恒温動物であるがゆえに必要とも言えます。爬虫類までの変温動物にはあまり必要ではないかもしれない。ただ、鳥がこの構造を持たないのはどうなんでしょうか。くちばしが放熱しているのかどうか。

口の方もこれによって初めて咀嚼が可能になります。消化能力が高まり、体全体の代謝量も上がり、酸素の要求も高まり、それに呼吸専用になった鼻がこたえる…という相乗効果もあったわけです。

さて、ここから体毛の話になります。ヒトは、歯や咀嚼筋が退化する一方で、脳がどんどんと肥大化し、口の突出が無くなり、これに伴い鼻腔も退行し、上記の冷却機能が衰えました。それの代わる冷却機能として、汗腺を発達させ、汗の蒸発を妨げる体毛が無くなったのではないか…。

もちろん、仮説の域を出ないわけですが。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「9 胎盤の出現」を読みました。(小林教室収蔵

胎盤ということですが、最初に後産(あとざん)について書いておきます。お産というと、子どもが出てくればおしまいだとばかり思っていたのですが、その後に後産というものがあって、これもなかなか苦しいものらしいです。

後産で出てくるのが、役目を終えた胎盤です。直径16〜20センチほど、厚さが2〜3センチほどの、ホットケーキのような形をした、血のしたたるスポンジ状のものだそうです。

妊娠中の子宮壁には絨毛間腔と呼ばれる空洞ができて、母体からの動脈と静脈がここに開放されています。胎児から伸びてきた臍帯の中の動脈と静脈は胎盤の中に入り複雑に枝分かれしていますが、絨毛間腔の中で折り返しているだけ。母体の血液と胎児の血液が混じり合うことはありません。

例えるなら、母体の血液がバケツの中に入っていて、これに胎児側の血管が木の根っこのように浸っているような形。出産のタイミングで、バケツの底が抜けて、木の根っこがバケツの枠ごと引き抜かれたものが、後産で出てくることになります。

胎児が生きて成長するための栄養の摂取や呼吸、老廃物の排泄が全て胎盤で行われるわけで、そういう意味では腸であり、肺であり、腎臓なわけです。

そのうえ、熱交換(体温調節)も行われています。これが行われないと、高熱のために胎児の生命も危険になると考えられています。胎児は、爆発的な細胞分裂を繰り返しているわけですから、発熱も凄いんですね。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「9 胎盤の出現」を読みました。(小林教室収蔵

爬虫類が陸上動物として独立するためには、炭酸カルシウムの結晶でできた固い殻に包まれた、水との縁を断ち切った卵が必要でした。この卵の構造は、鳥類の場合とほとんど変わりがないようです。つまり、我々にとっては一番なじみのあるニワトリの卵をイメージすればいいわけです。

卵黄と卵白があり、卵黄の上にある胚盤が成長して胎児となります。

母親の体内で作られる様子をニワトリの場合で見てみます。まず、卵巣の中の卵細胞自身が大量の卵黄を貯め込みます。こうして成熟した卵細胞は卵巣から排卵され、卵管にすくいとられたところで精子と出会えば受精することになります。受精の有無に関わらず、卵管を下り、そこを進むうちに卵白が添加されます。ついで、その上に殻が分泌されて完成となり、産み落とされます。胚盤と卵黄は、巨大な一個の細胞です。

胎児は、老廃物の貯蔵場所となる尿膜を腹に付けて成長します。老廃物のアンモニアは毒性が強く、尿素は毒性は低くても分解してアンモニアに戻りやすいので、化学的に安定な尿酸の形でこの袋に貯蔵されます。

卵白は大部分が水で、少量のアルブミン(タンパク質)が溶けています。胎児が成長を始めると、卵白を急速に吸収して空洞ができ、成長するスペースが出来上がります。

卵殻には無数の空気穴が開いていて、尿膜(絨毛尿膜)がここにへばりつき、呼吸をしています。また、卵殻を溶かして胎児の骨格を作るために必要なカルシウムも運搬します。成長するにしたがって、殻は薄くなり、誕生時に簡単に突き破れるようになっていきます。

さて、ここから先は本書の内容から離れます。窒素代謝の結果発生するアンモニアを殻の中に保管しておくには、尿酸の形にするのが一番望ましい。ですから、このような卵を産む鳥類と爬虫類の尿は尿酸になるわけです。哺乳類、両生類、軟骨魚類の尿は尿素、硬骨魚類はアンモニアのまま排泄するそうです。

そして、我々人間の場合は、プリン体代謝の最終生成物として尿酸を産生します。尿酸は、ビタミンCと同等の抗酸化作用があるため、腎臓で再吸収され体内を循環します。強い運動をすると尿酸値が高まるようになっていますが、これは酸素を無毒化する必要性が高まるためと考えられます。

尿酸は痛風の原因物質でもありますから、排泄を促す必要もあります。尿酸が排泄される際は、尿酸ナトリウムや尿酸カリウムの形で排泄されますから、NaやKなどミネラル分を多く含んだ水分の補給が必要です。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「9 胎盤の出現」を読みました。(小林教室収蔵

単孔類(カモノハシ、ハリモグラなど)と有袋類(カンガルー、コアラなど)は、卵生と胎生の間をうめるような、原始的な哺乳類です。

単孔類は哺乳類でありながら卵を産みますが、乳を与えて子どもを育てます。カモノハシは地下にトンネルを掘って巣を作り、ここに卵を産みます。ハリモグラの方は腹に袋があって、この中で卵をかえします。生殖方法は爬虫類と変わりません。

単孔類は、最初の原始哺乳類である原獣類の生き残りと考えられています。原獣類から有袋類と有胎盤類(ヒトを含む)が進化しました。

有袋類の雌の生殖器官は変わっていて、卵巣や卵管はもちろんのこと、子宮と膣までが左右に二つあります。二つの子宮はその基部で一部が連結しており、この部分から第三の膣ができています。左右の二つは雄のペニスが挿入され精子の通路となり、真ん中の一つは産道専用です。

余談になりますが、ある男性医師が「膣は入口」と表現したのに対し、ある女性医師が「それは男性目線であり極めて不愉快。私たち女性からすれば膣は出口である」と猛反発したという話を思い出しました。有袋類に関しては膣は一方通行ですから、この点でもめる心配は無いようです。

ヒトのように左右が合体した子宮と膣にならなかったのは、腎臓から膀胱へと連絡している尿管が左右の膣の間を通っているからではないかと考えられます。ヒトをはじめとする有胎盤類では、尿管が生殖管の外側にあるのです。

有袋類はたいへんな早産です。目が未分化であり、顎も頬もなく、肺は単純なのっぺりした袋なので呼吸の大半は皮膚呼吸です。これは胎盤の発達が悪いためだと考えられます。卵生の名残である卵殻膜が胎盤の発達を妨げているため、胎児に充分な栄養を与えられないようなのです。

栄養不足に耐えられなくなり、唯一発達している前足を使って、母親の袋まではい上がり、オッパイを吸おうとするのです。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「9 胎盤の出現」を読みました。(小林教室収蔵

脊索動物から魚類までは、無脊椎動物と同様、海に卵を生み落し、卵は海水中で大きくなりました。

上陸を果たした両生類も生殖のためには水から離れることはできず、卵は厚いゼリー層で守られてはいるけれども、卵としての構造は魚類と大差がありません。

爬虫類の胎児は羊膜で覆われ、中に羊水を入れ、羊水に浮かび、外側は固い殻で保護されています。水分の蒸発も防いでいるので、水から離れた地上に卵を生むことができます。

哺乳類は、爬虫類でつくりあげた羊膜の構造をそのまま母体に取り込み、子どもを育てるようになりました。

この流れを俯瞰したうえで、著者はこれからの胎盤の未来について自由に想像を膨らませています。それについては本書を見ていただくとして…

ヒトのこれ以上の脳の巨大化は難産をきたすし、さりとて産道を大きくするためには骨盤を拡大しなければならない。しかし、それでは直立姿勢のバランスを崩すことになる。この矛盾が、今後も立ちはだかることになるでしょう。

妻の二度のお産の時の産科医の対応を思い起こすと、帝王切開をやりたがっているように感じました。帝王切開は上の矛盾を解消する方法であり、カエサルの時代からあった歴史の長いお産の方法です。

帝王切開を増やすことで脳の巨大化が可能になるんじゃないか?というのが、私の自由な想像であります。頭でっかちの遺伝子を持った子孫が帝王切開で生まれることにより、人類は脳が巨大化する方に進化している可能性はあります。しかし、それは帝王切開を前提とした進化であり、自然分娩はどんどん困難になっていくでしょう。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「10 大脳皮質は考える」を読みました。(小林教室収蔵

《以下引用》
もっとも人類的な発達をとげているのは、前頭前野とよばれる前頭葉の前端部分である。この領域では、動機づけや概念的課題の遂行、集中力などといった高度な脳活動と、ふかいかかわりがあるものと考えられている。この領域が高い意識レベルをうみだし、目の前にあるものばかりでなく、これから作ろうとするものの視覚的なイメージを構成することができたり、さらには抽象的な概念の構成にあずかるもの、とみられている。
《引用終り》

これまで、このブログでも前頭前野については触れています。爆問エチカの鏡などテレビでも取り上げられていましたし、川島隆太先生も一時期は時の人でしたから、さぞ新しい研究成果だと思っていたのですが、井尻先生の時代から知られていたことなんですね。

《以下引用》
…ヒトの大脳皮質の発生のようすをみると、これらの言語野や前頭前野など、人類になってはじめて出現した領域は、その脳細胞の構築がもっともおそくなり、小児期に、やっとはじまるのである。このなかでも、運動性言語野の構築がはやく、つづいて聴覚性言語野、前頭前野の順に発達してくる。この順序性は、歴史的な大脳皮質の発達の順序にほかならない。
《引用終り》

人の人足り得る部分は小児期に形成が始まる…これは「頭のデキは生まれた時から決まっている」という意見が間違いであることを示しています。つまり、幼児教育が重要であることにほかなりません。

幼児とは逆の、成人の生活習慣病に関して、興味深いことが書いてあるので、最後に引用しておきます。

《以下引用》
ヒトの脳の大化には、別な側面からの限界性を指摘する学者もある。それは、脳の混乱した血管系が脳に制約をくわえている、という考えである。一般に脳をふくめて外胚葉からつくられた器官は、表皮を典型とするように、血管の侵入が乏しく、血管系の構築が原始的な状態にとどまっている。人類の急速な脳の大化には、血管系の発達がおいつかず、脳血管の障害が頻発する原因となっている、と考えられる。したがって、脳のこれ以上の発達は、血管系の改善なしにはありえないわけである。
《引用終り》

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「11 オトガイの謎」を読みました。(小林教室収蔵

お年寄りが「オトガイ」と良く使うので方言だとばかり思っていました。解剖学で出てきたときにはビックリ。

でも、この章はオトガイが主役という感じではなくて、進化の過程でヒトが失ったものと獲得したものを総括しています。オトガイは獲得したものの中のひとつ。

そんなわけで、今回は失ったものの方を並べていきたいと思います。自分的には、「優しい心」とか「ゆったりした生活」を挙げたいところです。詳しく知りたい場合は本書をご覧下さい。

尻尾。もともと長い尻尾を持っていたが、樹上生活のとき腕でぶら下がって移動するようになってから、無用となり退化した。つまり、二足歩行になる前から退化していた。尾骨は現在、肛門を固定する役目を担っている。

足の母指対向性。二足歩行には、都合がいい。

ヒゲ。感覚毛。

歯の退化。噛み合わせた時に犬歯が入る歯の隙間。歯根の数が減少。

顎骨の短縮。上顎骨と前上顎骨が融合。下顎骨の「サルの棚」(舌の筋肉が付着する骨の隆起)。

肋骨が一本減少。

耳介の退化。

色素の減少。

尻だこの消失。

陰茎骨の消失。

嗅覚や聴覚の退化。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「11 オトガイの謎」を読みました。(小林教室収蔵

今回は獲得したものの方を並べていきたいと思います。

直立二足歩行

背骨が垂直に立ち、下に行くほど椎骨が大きくなり、体の前後方向にS字のカーブができた。直立二足歩行に伴う。

骨盤が大きくなり、中殿筋大殿筋が発達。二足歩行の際に、片足でも体重を支えられるようになった。

膝関節が伸展位でロックされる。

足の構造:張り出した踵とアキレス腱、土踏まず(足底の縦横のアーチ)。

首の回転運動:大後頭孔が後部から頭蓋骨の直下に前進。乳様突起と胸鎖乳突筋

胸郭が横に幅広い。

咽頭の空間が広がり、言語の複雑な音声を作り出すことができるようになった。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「12 人体の矛盾」(p212〜229)を読みました。(小林教室収蔵

本のタイトルと同じ名前のこの章は、全体の総括から始まります。

《以下引用(p212)》
すでに11章にわたって、人体をつくっているいろいろな器官の起源をみてきたが、これらは、ほんの一例にすぎない。これとおなじ事態が、人体をつくっているその他の器官についても存在することは、もはや明白であろう。ヒトはみずからを、もっとも進化した最高の生物と信じてうたがわないが、予期に反して、その人体は起源を異にする、新旧さまざまな器官のよせあつめであることがわかる。…

それでは、このような新旧さまざまな器官が、なんらの統一もなく、たんなるよせあつめからできているかというと、むろんそのようなものではなく、全体として調和し、統一をたもっていなくてはならない。…

問題は、人体や生物体が、絶対的に調和のとれた完全なすがたではなく、統一されたなかにも、新旧の構成要素のあいだには矛盾が満ちている、という見解こそ、生物体の本質にせまるものである。
《引用終り》

そして、この矛盾の実例をいくつか挙げています。今回は直立姿勢に関する矛盾をノートしておきます。

まず、たちくらみ。直立姿勢になることで、心臓と脳の高低差が大きくなり、血圧の調整が追いつかなる現象らしい。

朝礼で立っている時に失神して倒れる小学生がいますが、多くの場合は腎臓下垂が原因なのだそうです。これは、腎臓の固定が未熟なために、立っていると腎臓が下にずり下がり、腎臓の血液循環がうまくいかなくなるものです。これも、四つん這いになっていたら起きないことです。

肋間静脈には血液の逆流を防ぐ静脈弁があります。肋間静脈では、血液は肋骨の間を背骨に向かって流れます。四つん這いならば、静脈血は垂直に上昇しますから、逆流防止の弁は重要です。しかし、直立姿勢ならば水平方向に流れますから、静脈弁は必要ないはずです。これは四つん這いのときの名残ということになります。

一方、腹部から心臓に帰る大静脈には静脈弁がありません。四つん這いならば水平方向に流れるので問題ないのですが、直立姿勢になった場合は重力に逆らって上昇する必要がありますから、逆流防止の工夫が欲しいところです。これが、たちくらみや痔の原因と考えられます。

《つづく》

「新・人体の矛盾」の「12 人体の矛盾」(p212〜229)を読みました。(小林教室収蔵

脳の血管について再び取り上げられています。興味深いので、私も再掲。

《以下引用(p214)》
血管のでき方をみると、消化管などをつくる内胚葉性といわれる器官に、もっともはやくから血管ができはじめ、かつ血管の配列もよく整備されている。つづいて、心臓や腎臓などの中胚葉性の器官に血管が発達し、もっとも遅れて表皮や神経などの外胚葉性の器官に血管がつくられてゆく。しかし、毛や表皮にみるように、外胚葉性の器官にはほとんど血管がはいらず、やっと脳をはじめとする神経系や感覚器官に血管ができはじめたばかりで、混乱状態にある。ここでは、ヒトの脳の急速な大化に、血管の構築がおいつかない、といった事態が生じてきている。げんに、ヒトの脳の拡大は、およそ7万年まえの旧人以降は、平行線をたどっているばかりか、縮小すらしている。
《引用終り》

脳が、毛や表皮と同じ仲間というのも面白いですね。

血管網の不備が脳の巨大化のネックになっているかもしれない、というのもいろいろ考えてしまうところです。脳細胞は大半が使われていないという話もありますが…。

もやもや病を思い出しました。徳永英明さんがなったということで一躍有名になった病気です。日本人に多く、発見したのも日本人の研究者なので、英語名もmoyamoya disease。ウィリス動脈輪閉塞症という別名が付いているんですね。ウィリス動脈輪は、クモ膜下出血の原因となる場所です。太い動脈が詰まり、不足した血液を補うために細い血管が発達するのではないかと言われているようです。

日本人に多いというのは気になります。日本人は脳の血のめぐりが悪いということなのでしょうか?

《初めから読む》

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