小学校で女性参政権について習った時のことだったと思う。娘は、帰宅するなり私に尋ねた。

「ねえ、パパ!昔は男が強かったの!?」かなり驚いた様子。

「そうだよ。男尊女卑と言ってね…」と、いろいろ説明したが、どうにも納得してもらえない。全く想像がつかないらしい。

不思議がる娘の様子を見ているうちに、自分もそんな時代があったのか疑わしくなってきた。男が威張り散らしていた時代なんて、今では全くリアリティがない。

仕事先で聞いた話である。奥さんがいくつかの不定愁訴で悩んでいて、主治医に相談してもなかなか良くならない。何か病気が隠れているかもしれないというので、大きな病院でいくつかの精密検査を受けることになった。検査当日は旦那さんが引率した。

最初の検査の受付で、「どうせなら旦那さんもすれば良いのに」というような冗談を言っているうちに、夫婦どっちが先に逝くか、みたいな話になった。すると、その受付の女性が、自分の母親が父親を残して先に逝ってしまった話を始めた。男が独り残されると、とても大変だという内容。これが、旦那さんへの最初の一撃だった。

帰りに、この夫婦は、小さな食堂で夕食を済ませることにした。入ってみると、客がいない。声をかけても店の人が出てこない。諦めて店を出ようとしたところに、店の主人が現れた。営業中だと言うので注文してみると、早速「食材が無い。さっき買って来るの忘れた」。そしてグチが始まった。

2年前に奥さんを亡くした。それから、何をやってもうまくいかない。生きている時は妻の悪いところばかり目に付いたのに、いなくなってみると思い出すのは良いところばかり。自分が先に逝けば良かった。なかなか、迎えに来てくれない。

食材が揃っているメニューをオーダーし、グチを聞きながらの食事を終えて、夫婦は食堂を出た。

立て続けに奥さんが先に亡くなる話を聞いたにもかかわらず、衝撃を受けたのは旦那さんの方だった。家についても放心状態。それを見て、奥さんはただただ愉快。「病気が見つかったら逝くだけだから(笑)。」

私も聞きたくなった。昔は本当に男が強かったの?