地球温暖化は間違いないのだろうけど、我が家周辺に限って言えば、今年は夏が来なかった。

7月は暑い日があった。でも、寝苦しい夜なんて2日もあっただろうか?そして、そんな夜であっても明方は涼しくて目が覚めるくらいだった。

8月になってからは、寝苦しい夜なんて一日も無かった。「残暑は厳しいのかもしれないね…」とか言い合ってたんだけど、そんな残暑も来ないまま、もう彼岸を迎えようとしている。

「今年は夏が来なかったね…暑い日が全然なかったね…」と、みんな言い始めているんだけど、そうじゃない人が身近に一人居た。母である。

あれは、8月のことだったと思う。

今日も暑くないね…こんな大きなスイカがまだこんなにあるよ…こんなに涼しくていつ食べるの?…スイカって温めたらおいしくないのかね…温めた人がおいしくないって言ってた…え?温めた人いるんだ?…昔、お風呂に水張ってスイカ浮かべて冷やしてる家あったよね?スイカを忘れてお風呂沸かしたらしくて、しょうがないから温かいまんま食べたらしい…やっぱり温めちゃダメか…

そんな会話をしているところに、その人は現れて、「あ〜暑い暑い。こんな暑い夏は初めてだ。」と言い放った。母は80歳。更年期という若さではない。ということは、ボケた?

「え?暑いの?涼しいの間違いじゃなくて?こんな涼しいの初めてだという人には何人もお会いしてますが、こんな暑い夏初めてなんて言う人にお会いしたのは初めてです!お母さん、生まれてからずっと北極にでもいるんでしたっけ?」
「私の部屋に来てみなさい。ここより暑いんだよ。」

「いや、確かにお母さんの部屋は東側だからこの部屋よりは暖かいと思うけど…ここは涼しいから、お母さんの部屋はちょうど良いくらいじゃないの?」
「そんなことないな〜暑いな〜」

やっぱりボケたのかな…ボケた人の言うことは否定してはいけないんだったな…と、ちょっとだけ後悔した。しかし、しばらくして、テレビのニュースを見て、謎が解けた。

その日は、東日本と西日本できれいに天気が分かれていた。東日本は涼しいけど、西日本は記録的な猛暑だったのだ。ニュースは、当然のことながら過ごしやすい東日本の様子など取り上げず、とんでもない暑さの関西の様子ばかり映していた。

母は、関西にいたのである。北極ではなかった。いや、ナントカ地球紀行とかで、北極の映像を見ていたら「寒い、寒い、こんな寒い夏は初めてだ!冬より寒い!」と言って我々の前に現れたに違いない。

この事象から何が学べるか。まずはテレビの影響の強さ。大きな画面の臨場感は半端ない。母は、強烈な催眠術をかけられたと言っても過言ではない。そしてそれが、母の思い込みの強さとの相乗効果で、このような事態になったと分析できる。

ボケたのか、そうでないのか。そこは微妙だ…。温かく見守ろう。