60代男性のクライアント。左膝が痛い。しかし、触察した感じでは関節が悪いようには思えなかった。よくありがちな変形性膝関節症とは何かが違う。いずれにしても関節をよく診てもらうことは必要だ。レントゲン等を使った医師による診断が。

「整形外科で診てもらって下さい。」とお願いしても、接骨院や整体に行ってしまう人が意外に多い。医師とそれ以外の医業類似業者(私も含まれる)とでは、特に法律上、雲泥の差があるのだが、それを知らない人が多いのだ。

医師は最新の検査技術や治療方法を行うことが認められている。だから、私のクライアントがその恩恵に浴することを妨げてはいけない。そういう医師側の法的な優位性を差し引いても、私たちは医師とは違う方法論で診て治すわけだから、違う意見にも耳を傾けるべきである。なぜなら、それが私のクライアントの利益につながるから。

さて、このクライアントは整形外科でレントゲンを撮ってもらい、軟骨が減ってますね〜という診断を受け、ヒアルロン酸の注射もしてもらってきた。幾分楽になったような気はするが、訴える症状は全く変わらなかった。

ゴルフをすると痛くなる。ハーフ回って休憩して、椅子から立ち上がる時に痛み始める。しかし、歩き始めるとそうでもない。帰宅後、椅子に座って立ち上がる時に痛い。自動車から降りる時に痛い。正座もできない。ある程度まで膝を曲げると痛くてそれ以上曲げられない。

本人の分析はこうだ。ゴルフをすると痛くなるのだから、ゴルフの動作に原因があるのは明らかだ。スイングの後半は左に重心が移動するから、膝に負担がかかる。それで関節が痛んでいるのだ。

でも、私には引っ掛かることが一つあった。膝が痛むのが階段を上る時だということ。下る時は何ともないと言う。

膝関節を傷めている人は、大抵これと反対である。上る時は痛くない。下る時は衝撃が膝にもろにかかるから激痛が走る。だから、階段を後ろ向きに降りる人もいるくらいだ。

膝関節は悪くないんじゃないか?

カルテを遡ってみると、2カ月前から、ずっと左大腿の後方内側が黄色にマークされている。半腱様筋と半膜様筋が硬いのだ。この2つの筋肉は股関節伸展の主動作筋であるが、内旋の副動作筋でもある。

痛みを発しているのがこの2筋だとすると、階段を上る時(股関節伸展動作)に痛むのは説明がつく。

私は20年ほど前に少しだけやっていたゴルフを思い出して、スイングの格好を何度か繰り返してみた。左大腿に意識を集中して、スイング。また、スイング。

左大腿が内旋している。これだ!これに違いない。

スイングの最後にしっかりと腰を回転させるために、左大腿の2筋に力が入るのだ。だから、ゴルフをするたびに痛くなることも説明がつく。

しかしながら、幸か不幸か、それに気づいたのは初冬。ゴルフはシーズンオフとなった。そして、ひと冬休んだ今では、膝の痛みはすっかり消えている。

これからの変化に注意していこう。

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