この方は90歳のお婆ちゃん。

ある日、電話に出たら、相手の声が聞こえない。「電話が遠いので、もっと大きい声でお願いします!」と言ったが、やはり聞こえないので受話器を置くしかなかった。

それから、かかってくる電話全て相手の声が聞こえないことが分かり、電話機の修理を家族に頼んだ。他の家族はみんなケータイを持っているから、固定電話は使わない。

「どれどれ」と家族が電話機を試してみると、ちゃんと聴こえる。

「婆ちゃんの耳が壊れてるんじゃないの?」と言われ、反対の右耳に受話器を当ててみたらちゃんと聴こえた。右耳は聞こえていたから、左耳が突発性難聴になっているのに気づかなかったのである。

「電話機を疑う前に自分を疑って下さい。」と家族は手厳しい。

「年齢を考えると、耳が聞こえにくいのは珍しくないかと…」と主治医も冷たい。

「とってもがっかりしました。」と、彼女は私に打ち明けた。

「耳が聞こえないのが当たり前だろうからね…」と肩を落とした。

このクライアントには10日に一度訪問している。突発性難聴になったのは5日前。診てみると、左の肩から首・後頭部にかけてとても硬かった。何年来のお付き合いであるが、こんなに凝っているのは初めてだ。

突発性難聴は原因不明とされ、いろいろなケースが考えられる。医師が治療を行う場合は耳の周りの血流を調整する薬が処方されることが多い、と説明した。

そして、それほど時間が経っているわけでもないし、首・後頭部(耳周り)が今までに無いくらい凝っているから、これを解せば可能性はあるかもしれないと伝えた。

入念に手技でコリを取り除いた上で、鍼と灸の施術も行った。

施術後、「何だか良いみたい。」と笑顔。「今度は5日後にしてみようかね?」ということになった。

5日後に伺ってみると、前回施術してから左耳の聴覚がだいぶ戻ったと喜んでくれた。そして、その更に10日後に伺った時には「完全に治った」と言ってくれた。

年寄りの耳が聞こえないのは特段驚くことではない、と言われればそうかもしれない。とは言え、本人にしてみれば、90歳とはいえ、というよりはむしろ、90歳だからこそ、聞こえなくなることは、とてもとてもショックなのである。

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