ウメさんの口癖は、「もう生きるのに飽きた。こんな長生きなんてするもんじゃないよ。」これの違うバージョンで、「こんな長生きするとは思わなかったよ」という言葉を聞いたことがあった。

若い時、結核になった。その時、肺に玉を入れる治療法が流行っていて、その手術を受けた。ところが、手術後まもなく、その治療法が間違いであることが分かり、すぐに再手術。【ネット検索したら同様の経験をされた方がいらっしゃるようです

ウメさんは詳しく説明して下さったのだが、どうも信じられない。お灸をするついでに傷跡を見せてくれた。肋骨に沿って、背中を横に一本の傷が走っていた。50年以上前の傷なのでそんなに目立たないのだが、背骨の近くから脇の方までの大きな傷である。

ジョージ・ワシントンが当時流行っていた瀉血療法で血を抜かれ過ぎて死んだらしいことは有名な話だ。新しい治療法を模索していれば、後にとんでもないと分かることだってあるだろう。それでも、その当事者に会って、傷痕まで見せてもらえたのは驚きだった。

「こんなお婆ちゃんになるまで生きるなんて、全然思わなかったよ」と、ウメさんは大笑いした。正直、当時の私もそう思った。

最近はこう考えている。長生きというのは、自分の体に合った習慣や考え方を身につけられるかどうかにかかっているのだと。医者も教えてくれない、自分の体にだけ通用するノウハウがあるのだ。もちろん、医者のアドバイスも参考にはなるだろう。テレビや雑誌で見つけた健康法を試してみるのも良いだろう。その人なりの試行錯誤が必ず必要なのだ。

そして、その試行錯誤を始めるきっかけは、人生の比較的早い段階で訪れた方が良いようだ。きっかけが訪れない限り、人は自分の健康を疑わないし、そういう情報に目を向けようともしない。塞翁が馬ということのようだ。

〈最初から読む〉
「訪問日記」一覧

◆◆◆鍼灸治療室.トガシ◆山形県東根市◆◆◆