ウメさんのところに通い始めて、3回目くらいの頃だったと思う。支払いの時、ウメさんの様子が変だった。

私が金額を告げて、ウメさんがバッグの中から財布を出して、中を見ている時に…

一万円札がパラリと下に落ちた。そして、また一枚…また一枚…

ウメさんはそれには気づかない様子で、財布の中を探り続けている。

私は、すかさず「お金落ちましたよ!」と言って駆け寄り、お札を拾おうと伸ばした手の上にさらに一万円札が一枚…。私は急いでお札を拾い集めて、ウメさんに手渡した。

「あら、私、どうしちゃったのかね〜。目はよく見えないし、手もいうこと聞かないし…嫌になっちゃうね〜」と言って、ウメさんは笑い出した。

手に何らかの障害が出てきたのだろうか?例えばパーキンソン病とか。そんなことを考えながらその後も伺う度に様子を見ていたが、そんな症状はその時以来見られなかった。

それでも心配だったので、向かいの家に住んでいる栗原さんに聞いてみることにした。ウメさんと接していて最近何か変わったことはないかどうか。

「小さい時から変わってると言えば変わってるからね〜」と私の真面目な質問を笑い飛ばしてから、
「何で?」と彼女は興味津々の様子で尋ねた。

私は一万円札バラマキの一件を話した。「へぇ〜」と彼女は面白そうに聞きながら、何か考えている風だった。

「ひょっとしたら…」と私は続けた。
「私を試されたのかなとも思ったんですが。」

「多分、そうだと思うよ。」と栗原さんはサラリと答えた。

「前に、お手伝いさんからお金を持ち逃げされたことがあるんだよ、あの人。だから、あなたを疑ったわけではないんだろうけど、念のため確かめさせてもらったんじゃないかな。金持ちは大変だよね。いろんなこと心配しないといけなくて。」

私は驚いた。そんなことも想像はしていたが、改めて聞かされるとやはり驚くものだ。

「でも、その後も頼まれたんでしょ?だったら合格したんだね(笑)。気にしないで、これからも通い続けた方が良いよ。金持ちなんだから、長く付き合ってしっかり稼ぎなさい。」
とアドバイスを頂いた。

〈つづく〉
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