あるお客様から、オムツが余っているので要らないか?と言われた。介護保険でオムツが入手できるようになったので、それまで買っておいたオムツが少し余っている。あなたのお客さんで、もし介護保険が適用されるまでの間とかで、オムツが必要な人がいたら役立ててほしい…という有り難い申し出であった。

その時は、あては無かったので、少しだけ頂戴した。当時は、私たち夫婦は花火大会によく出かけていて、大曲の花火ともなれば仮設トイレのまえに長蛇の列ができる。打ち上げ開始後に行きたくなれば、せっかくの花火の大半を仮設トイレ越しに見る羽目になる。だから、花火に行く時でもはいて行こうか(笑)なんて話をしていた。

そんな矢先、秋葉さんがトイレに困っていることに気がついた。尿漏れしているようなにおいを感じたのだ。

私は何気ない感じを装って、
「すぐには立ち上がったり歩いたりできないから、トイレも遠く感じるでしょうね…」と言ってみた。

すると、間に合わなくて履き替えなければならないことがよくある、と彼は打ち明けた。しかも、尿意を感じにくくなっているらしい。

そこで、私はオムツを薦めてみた。寝たきりでもないのにオムツを使うという発想は彼には無かったようだ。
「結構、みんな使ってるんですよ。特に女性は尿漏れしやすいから、使っている人は珍しくないです。元気な男性の方でも尿意を感じない人は結構います。みんな使ってます。だから、全然恥ずかしいことなんかないですよ。ちょうど別なお客さんから頂いた物があるので、試してみませんか?良い様だったら、買って下さい。薬局に行くと簡単に手に入りますから。」

オムツに戻るということは、人にもよるけれど、自分のプライドを克服する必要がある。彼の場合はどうだろう…。

施術が終わってすぐに、頂いたばかりのオムツを取りに行き、秋葉さんに渡した。

「便利になったな…。」と、喜んでくれた。私はホッとした。

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