その日、秋葉さんの予約は午前11時からだった。

訪問すると、玄関先にお金の入った封筒が置いてあった。封筒には、
「ヤクルト配達の方へ
いつも配達ありがとうございます。出てくるまでに時間がかかりますから、代金をここに置いておきます。」

意外に(と言っては失礼なのだが)細やかな気配りができる人なのだと思った。自分に対する配慮ではないけれど、こういったことを目にするのは嬉しいことである。

施術していると、「どーもぉ!」と玄関で男の声がして、何かを置くと帰って行った。

「誰か来たみたいですよ。」と言うと、
「弁当だべ」と秋葉さん。

秋葉さんの妹さんが3軒隣で工場をしている家に嫁いでいるとのこと。弁当を持ってきたのは、その息子だから秋葉さんの甥ということになる。工場で弁当を取っているので、秋葉さんの分も一緒に頼んでいてお昼前に持ってきてくれるらしい。

施術が終わって帰る時、時刻はほぼ正午である。私は玄関先に置いてある弁当を茶の間のテーブルまで持ってきた。
「さあ、どうぞ」

ほんの3メートルくらいの距離。でも、膝の痛い人にとってはとても遠いのだ。
「ありがとう」と、秋葉さんは言った。

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