秋葉さんは80代。左の膝が痛むので、家の中でも杖をつき、足を引きずるようにして歩いている。その他に特に痛い所はないが、膝の痛みだけでもかなり行動は制限されて、何をするにも億劫になっている。

「お一人で暮らしているのですか?」と尋ねると、

「息子と二人です。息子には嫁もいたんだけど、別れてしまった。私の妻も亡くなってしまって…この家は全く女に縁がないのです。」と言って、秋葉さんは苦笑した。

息子さんは会社を定年退職しているとのこと。確かに言われてみると、二階に人の気配がする。食事や洗濯などは息子さんがするのだろう。

週に一度のペースで、秋葉さんのところに通うことになった。しかし、息子さんに初めてお会いしたのは数カ月してからのことだった。

「こんにちは〜」と言って玄関の戸を開けると、すわって靴を履いている。顔がそっくりだったので、息子さんだとすぐにわかった。

「お世話様です」と軽く挨拶をして、出かけて行った。杖をつきながら。息子さんも、足が悪かったのである。

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