***In the afternoon, I got a call from her.***

いつもは早朝に電話が来ることが多いのだが、その日は珍しく昼過ぎだった。

発信先がスエさんであることを確認して、電話に出た。

「もしもし。鍼灸のトガシですが…」

返事が無い。

「もしも〜し。スエさん?」

しばらくして、スエさんの声。
「あ…先生…私ね…〇△×…ガチャリ」

その後、すぐに電話してみたが、何回呼び出しても出ない。

老夫婦の二人暮らし。夫はアルツハイマーで、妻が介護している。でも、ヘルパーさんは断ったから、もう来ない。「介護疲れの妻が悩んだ挙句…」などという新聞の見出しが頭をよぎった。

とにかく行ってみなければならない。スエさんの家へと車を走らせた。

家は、外から見た感じでは異常は無かった。玄関の戸は開けっ放しだが、これはいつも通り。

「こんにちは〜。スエさん!いませんか?失礼しますよ〜」

一階の部屋はほとんどお邪魔したことがあるので、間取りは知っていた。ただ、侵入者がいて戸の陰に隠れているかもしれないとか、二人が襲われて倒れているかもしれないとか、そんなことばかり頭に浮かぶので心臓は高鳴った。

もう、二階しかない。

「スエさん!いませんか?二階に上がりますよ!」

私は二階に向かって叫び、返事が無いのを確認すると、階段をゆっくりと登っていった。

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