*** He was a masseur in old days. ***

ある日、池田スエさんに手技療法の施術を行っている時、信市郎さん(旦那さん)が脇で見ていた。いつもは自分の番の時とかトイレに行く時に寝床から出てくるだけだったから、その日は気分が良かったのだろう。

そしてスエさんに声をかけ始めた。
「痛いのか?苦しいのか?でも大丈夫だから。きっと楽になるから。」
スエさんは笑っている。

少しの間、信市郎さんは私の施術を見ていたが、ついには私に指示を出し、自分も手伝い始めた。
「じゃあ、あなたはそっちの方お願いします。私はこっち側をしますから。」
私はスエさんの右半身を施術していたのだが、信市郎さんはスエさんの左手を取って揉み始めたのだ。

私はすっかり戸惑ってしまったが、長年連れ添った奥さんの手を揉んでいる姿は微笑ましい感じだった。
「旦那さん、優しいんですね」

「違うのよ。昔、お父さんは人から頼まれて揉んであげることがあったのよ。私を同じ村の誰かだと思ってるんでしょう」

確かに慣れた手つきだった。時空を超えて、昔の治療師の技術が今再現されているのだ。いつしか私は、治療師セミナーで行われる実演を見る目つきになっていた。

「プロなんですね?」
「いいや、免許なんか持ってなかったよ。だから、お金は貰わないで、酒ご馳走になって帰って来てたの。私は、ずっと留守番して豚の世話(笑)。」

しかし、信市郎さんのタイムトリップはこれに止まらなかった。

「訪問日記」一覧

◆◆◆鍼灸治療室.トガシ◆山形県東根市◆◆◆