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「空海コレクション 1 (秘蔵宝鑰・弁顕密二教論)」(ちくま学芸文庫)「秘蔵宝鑰」(p16〜257)の序論(4)「曼荼羅世界を詠んだ詩句」を読みました。

《以下引用(p31)》
頌(じゅ)にいわく、

金剛(こんごう)内外(ないげ)の寿と
離言垢過(りごんくか)等空の因と
作遷慢如真乗(させんまんにょしんじょう)の寂(じゃく)と
制体籏光蓮貝(せいたいきこうれんぱい)の仁と
日幢華眼鼓(にちどうけごんこ)の勃駄(ぼっだ)と
金宝法業歌舞(こんぽうほうごうかぶ)の人と
捏鋳刻業威儀(ねつじゅこくごういぎ)等との
丈夫無碍(むげ)にして刹塵(せつじん)に過ぎたまえるを
帰命(きみょう)したてまつる

我、今、詔(みことのり)を蒙(こうむ)って十住を撰(せん)す
頓(とみ)に三妄を越えて心真に入らしめん
霧を褰(かか)げて光を見るに無尽の宝あり
自他受用(じたじゅゆう) 日に弥(いよいよ)、新(あらた)なり

軷祖(ばっそ)して伽梵(がぼん)を求む
幾郵(いくうまや)してか本床に到る
如来明らかにこれを説きたまえり
十種にして金場(こんじょう)に入る
已(すで)に住心の数(しゅ)を聴きつ
請う彼の名相を聞け
心の名は後に明らかに列ぬ
諷読(ふどく)して迷方を悟れ
《引用終わり》

訳の後、「胎蔵曼荼羅」「金剛界曼荼羅」「両部」について解説があります。

「胎蔵曼荼羅」では、以下の記述が気になりました。
《以下引用(p38)》
…特に注意すべきは『十住心論』は九顕十密であるのに対して、『宝鑰』は九顕一密であって顕教と密教とは次元を異にするとみること、前者は密教すなわち第十住心によって第一住心より第九住心までの顕教をすべて包摂していることである。

胎蔵曼荼羅は理(理法)の原理、平等の世界を示すのに対して金剛界曼荼羅は智(智慧)の原理、差別の世界を示す点からみても、九顕十密は金剛界的な、また九顕一密は胎蔵的な世界観とみることもできよう。
《引用終わり》

「金剛界曼荼羅」では…
《以下引用(p38)》
『宝鑰』は胎蔵界曼荼羅の構成を基礎にしている。帰敬頌(序詩)は金剛界と胎蔵の両部を巧みに組み合わせて両部曼荼羅の世界を要約的に示している。…

真言密教の大法を両部としてアンビヴァレンスに関係づけたのは中国の不空(705-774)であり、恵果(746-805)、空海へと伝えられた。
《引用終わり》

「両部」では…
《以下引用(p39)》
空海は金剛界・胎蔵の二つの曼荼羅を両部という。金剛界は智、胎蔵は理を表わすというのは中国密教の理解の仕方である。

両部を不即不離の関係すなわち金胎不二、理智不二として明確に説いたのは覚鑁(1095-1143)からであって、空海にはまだ不二思想は認められていない。・・・

『十住心論』『宝鑰』の冒頭の帰敬頌には金胎の構成を組み合わせてあるが、両部曼荼羅を「天珠の如く渉入して虚空に遍じ、重々無礙にして刹塵に過ぎたるを帰命したてまつる」(『十住心論』)、あるいは「重々帝網なるを即身と名づく」(『即身成仏義』)とあるのみで、空海が両部不二の語を用いているという従来の説は訂正されなければならない。
《引用終わり》

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