「新・人体の矛盾」の「ノドチンコの謎」(p208〜210)を読みました。(小林教室収蔵

俗に「ノドチンコ」と呼ばれているものですが、正しい名前は「口蓋垂」というようです。口の上の方(口蓋)は骨が裏打ちしているので固いのですが、奥の方は柔らかくなっています。名前も「軟口蓋」。内部に筋肉があり、よって可動性があります。

軟口蓋は、物を飲み込む時に後ろの咽頭壁に跳ね上がって、鼻腔に蓋をします。このお陰で、食塊が鼻腔に入らないようになり、逆立ちしても水が飲めるとのこと。ノドチンコは、この密閉度を高める働きをしていると考えられています。

チンパンジーもノドチンコを持っているそうですが、イヌには無いそうです。

《以下引用(p209)》
イヌでは口蓋垂にあたるような突起はないものの、内部には立派な口蓋筋という人の口蓋垂筋とおなじ筋が見られる。ここで重要なことは、動物の軟口蓋のはたらきがヒトとは大きく異なっている点である。動物のばあい、軟口蓋の後ろに、気管の入口である喉頭の筒を鼻腔の方に挿入する形になっている。軟口蓋はこの喉頭の筒を押さえこむはたらきがある。

イヌは、喉頭を自在に鼻腔側に出し入れすることができる。ふだんは挿入状態にあるが、吠えたり口でハーハーと呼吸するときには、出すか半挿入状態にしている。餌を食べるには、喉頭を鼻腔に入れた状態にして呼吸を確保しておき、食塊は筒になった喉頭の脇を通って食道へ送りこまれるか、あるいは大きな食塊のばあいは、喉頭蓋が自動的に押し倒されて喉頭をふさぐ仕組みになっている。

これがヒトのばあいにはまったく事情が異なり喉頭がずっと下にさがっている。…そこで、ヒトは食物をのむ瞬間が大問題となる。下方でぽっかり口を開けている喉頭(気管の入口)に食塊がはいらないように、喉頭全体を持ちあげて蓋をする。つまりその瞬間は呼吸を止めて、喉頭を締めつけつつ食塊を押し下げて飲みくだすのである。
《引用終り》

これは、直立姿勢になることで首の角度が変わってしまったことが原因と考えられています。そのおかげで、自由な発声ができるようになりましたが、嚥下は非常に難しいものになったということのようです。

ものごころついた頃には特に意識することなく食べ物を飲み込んでいるわけで、そんなに難しい行為でもないと思っておりました。でも、高齢になると嚥下困難という状況はよく見られます。食物が肺に入って肺炎にでもなれば命取りになります。もう長くないと言われた方が、胃ろうの手術をしたことで何年も生きられるようになる例も少なくないようです。

それだけ、飲み込むことは難しいことなのですね。

《初めから読む》