「新・人体の矛盾」の「4 腎臓の進化」を読みました。(小林教室収蔵

排泄物として、大便と小便は固体か液体かの違いでしかないように感じますが、大便は食物として一度体に取り入れた物から栄養分を吸収した残りカスであり、小便は栄養分として吸収された物のなれの果て(老廃物)である、と大雑把に言えると思います。

人間の場合、22日目、全長が3ミリ足らずの頃に、最初の腎臓組織である前腎が現れるそうです。30日目頃から前腎管の周りに中腎ができ始めます。35日目頃までには中腎に取り込まれた部分以外の前腎は、完全に消滅します。中腎は、男性の場合は精巣上体・精管・精嚢・射精管に、女性の場合は卵管・子宮・膣の一部になります。中腎の末端部分が後腎となりますが、これが最終的に腎臓になります。

胎児は妊娠三カ月目ころから羊水中にオシッコを放出しており、腎臓(後腎)は機能を始めています。胎児の前腎と中腎がどんな機能をしているかは不明ですが、進化の過程ではきちんとした働きがあったはずです。

前腎は原索動物からはじまって、最も原始的な脊椎動物の腎臓です。中腎は、ヤツメウナギにその兆しが現れて、魚類と両生類の腎臓をつくっています。後腎は、爬虫類・鳥類・哺乳類の腎臓ということになります。

生物体をつくる蛋白質は老廃物となるとアミノ酸に分解され、最終的にはアンモニアになります。アンモニアは非常に毒性が強く、血液中にたった二万分の一入っても死んでしまいます。魚の場合は水中にたれ流せばよく、皮膚やエラから排出するので、腎臓の働きとしてはアンモニアの処理よりも塩類の排出の方が重要です。

生殖のために生殖細胞を外に排出する必要に迫られた時、同じ排出機能をもつ腎臓周辺の器官を改造することで対応したという事情もありそうです。

処々の事情により、前腎・中腎の過程を経て、やっと出来上がる腎臓。でも、発生段階では、必ずこの進化の過程を繰り返さなければいけないことが、ニワトリの卵の実験などで明らかになっています。

人体の矛盾・不合理性が非常によく分かる臓器のひとつだと思います。

《つづく》