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「空海の夢」(春秋社)
「20.六塵はよく溺るる海」を読みました。

《以下引用》
われわれがつねに考えなければならない最も怖るべき問題のひとつは、「生命は生命を食べて生きている」ということにある。この怖るべき事実から唯一のがれられるのはわずかに緑色植物の一群だけである。
《引用終わり》

「生命とは何か」という問いには完全ではないながらも、科学で何らかの説明ができるようにはなってきています。しかしながら、「生命が生命を食べる矛盾」には何ら答えが見つかってはいません。

《以下引用》
…「生命が生命を食べる矛盾」は、ひとり人間のみが尊大な善人面をしていられないことを、また悪人面をしてもいられないことを、生命史の奥から告発しているかのようなのである。
《引用終わり》

人は何かを食べなければ生きられません。何かとは他の生き物。他の生き物を殺し続けながら、私たちは生きていかなければならない。

《以下引用》
…矛盾を犯してまで前進する生物史は、またあくなき冒険の歴史でもある。摂取と排泄の爆発、海中から淡水への前進、「性」の発現、水生から陸生への転換、地上から空中への飛翔、樹上から地上への逆退転――。生物史はその矛盾と冒険に充ちたプロセスにおいて、信じられないほど多くの発明をし、また失敗をくりかえしてきたあげく、結局のところはふたつの相反する特徴を残すことになったのである。

第一にはそれらの生物が共存するということ、第二にはそれらの生物は共食するということだった。第一の特徴が認められないかぎり第二の特徴はなく、第二の特徴が認められないかぎり第一の特徴も成立しない。
《引用終わり》

私たちは他の生物を殺さない限り生きられない。そして、他の生物を全て殺してしまったら、私たちも生きられない。ウイルスのモラルにも似た微妙な関係。

かの名文「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」には、この矛盾が含まれているということのようです。

『秘蔵宝鑰』を読むとき、この章を再読したいと思います。

《つづく》