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「唯識入門」(春秋社)
「第四章.識と縁起」の「三.識の内部での縁起」を読みました。

『中辺分別論』第一章「虚妄分別」の第十偈・第十一偈が出てきます。

(1.10)覆いさえぎるから、成長させるから、導くから、統一させるから、完備させるから、三つのものの判別があるから、享受するから、引き起こすから、
(1.11ab)結びつけるから、現前のものとするから、苦しませるから、生あるものは苦悩する。

《以下要約》
・「覆いさえぎるから」:如実に見ることを(1)無明が覆いさえぎるから。
・「成長させるから」:形成力すなわち(2)行が過去の行為の習慣性(熏習)を次の識の中に置き、成長させるから。
・「導くから」:新しく生まれ変わる場所へ(3)識が導き到達させるから。
・「統一させるから」:心的物的存在すなわち(4)名色が、自己存在を他と区別された個体的存在として統一し、維持するから。
・「完備させるから」:六種の知覚の場すなわち(5)六入が個別の身体的存在を完備させるから。
・「三つのものの判別があるから」:六根・六境・六識の三つのものの接触すなわち(6)触が、楽・苦・不苦不楽の三種の感受に相応した感覚器官の変化を判別するから。
・「享受するから」:楽・苦・不苦不楽の三種の感受すなわち(7)受が、過去の善悪の行為の結果を享受するから。
・「引き起こすから」:過去の行為(業)によって、その結果として予定されている後の世への再生を愛欲すなわち(8)愛が引き起こすから。
・「結びつけるから」:後の世への再生の起こることを助長する愛欲などへ、執着すなわち(9)取が識を結びつけるから。
・「現前のものとするから」:再生したとき、生存すなわち(10)有なるものが、かつてなされた行為の結果を成熟させるために、その過去の行為を現実の場にもちきたらすから。
・「苦しませるから」:生まれることすなわち(11)生が、また、(12)老死が苦しませるから。
《以上要約…詳しくは本書参照》

(1)〜(12)の十二支は、これまでにも出てきましたが、唯識ではすべて識の中で展開すると考えるわけです。

これは唯識が初めて主張したことではないそうで、『華厳経』の「十地品」で、第六現前地において菩薩が明らかにすることとして、「三界は唯心なり」と説かれているそうです。まさにこれこそが「唯識」という考え方の起こりで、唯識説は『華厳経』唯心観をより詳細に解明すべく生まれた思想といってよい、とのこと。

《つづく》