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「仏教入門」(東京大学出版会版)
「六章 悟りへの道」の後半を読みました。

今回は三学(戒・定・慧)について。前回の八正道は、戒を保ち、禅定を実践して、智慧を得ることに要約され、これが三学にほかなりません。「学」は学ぶというよりも、修行の意に近く、三学は修行道の全体の枠組みとしてしばしば用いられます。

(1)戒
・行為上の諸規範。
・他から強制されるものではなく、自発的に守って身につけなければならない。
・最も基本的なものは、不殺生、不偸盗、不婬、不妄語、不飲酒の五戒。
・大乗仏教では、十善業道(不殺生不偸盗不邪淫不妄語不両舌不悪口不綺語不貪欲不瞋恚不邪見

(2)定
・心を統一し、安定させること。音写して「三昧」「三摩地」と言う。
・心が静止するという意味で「止」(舎摩他)とも言う。
・具体的方法は「禅」と呼ばれる瞑想法が主なので、「禅定」とも言う。
・禅(静慮)は、仏教の教えるさまざまな教理を静かに慮る。これを「観」という。
・禅定は日常生活において心をコントロールすることである。仏典では心の状態を定心と散心にわける。散心は通常の状態をいう。禅定に熟達すると、容易に散心から定心にかわり、また散心にもどる。ブッダはつねに禅定に入っては、その階梯を容易に上下する。そして出定したあとで弟子たちに説法する。修行者もまた同じような訓練をうけるのである。
・その階梯にあたる九次第定(四禅、四無色定、滅尽定)についても、この章にまとめてあります。

(3)慧
・「般若」、いわゆる智慧。悟りに導く知恵。苦の滅=涅槃に導く手段としての知。
・出発点は仏の教えの聴聞、その法を受け入れて、自ら心の中に思いうかべて反芻して正しく知り、その教えに従って実践修行して、その知を深め、最後に悟りに達する。
・入門の初めから悟りにいたるまで段階に応じてはたらくので、聞慧、思慧、修慧に分けられる。「定」の内容として示される観法は修慧にあたる。
・仏と言えども、衆生を相手に法を説いているときは、通常通りの分別の世界にいる。つまり、知るはたらき(主観、能知)と知られる対象(客観、所知)に分かれる。しかし、凡夫のような疑惑、迷い、曖昧さ、不正確さ、対象に対する執着はない。

小乗の利他行:四無量心と四摂法

四無量心
1.「慈」他人に楽を与えること
2.「悲」他人の苦を除くこと
3.「喜」他人の楽を喜ぶこと
4.「捨」喜憂・苦楽を超越した平らかな心

四摂法:衆生を済度摂受する四種の徳行
1.「布施」ひとに慈しみの心をもって接し、財物や教えをよく施す
2.「愛語」ひとに接するに、つねに温顔とやさしい言葉をもってする
3.「利行」つねに他人のために利益となることを行う
4.「同事」自他の区別をなくし、他人と一心同体となって協力する

大乗の菩薩行:六波羅蜜
波羅蜜とは最高完全なる状態の意で、それぞれの徳目の完成ということ。
1.「布施」:在家の場合は財施、出家者は法施。菩薩は衆生に無畏を施すべき。
2.「持戒」:三帰依(仏法僧)と十戒。
3.「忍辱」:忍耐心。苦難に耐えること。忍には、法を真実として受け入れる意もある。
4.「精進」:善を進め悪を止める努力。他の五波羅蜜すべてにかかわる積極的態度。
5.「禅定」:空・無相・無願の三解脱門を観ずる三昧。
6.「般若」:大乗の悟り。真理(真如)と一体となる。「五蘊は〔自性として〕皆空であると照見する」こと。

華厳経では、般若波羅蜜のはたらきの内容をひらいて4項を加え、十波羅蜜が説かれている。
7.「方便」:他人を救済する手段ということで、慈悲にもとづく。
8.「願」:衆生を済度しようとする誓願。
9.「力」:衆生を救う実行力。仏の十力。
10.「智」:以上の諸力の根底にある、世間、衆生のすべてのことを知る智。

《つづく》