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NHKスペシャル「立花隆思索ドキュメント」(11月23日放送分)を見ました。大変衝撃的だったのは、がん細胞と正常細胞との見分けが非常に難しいということ。

顕微鏡で見れば一目瞭然というわけではない(もちろん爆発的に増殖してしまえば、その限りではないでしょうけど)。

がんになってしまったら頼れるのは自分の免疫(!)とばかりに免疫を高めると言われる健康食品を摂る人は多いです。他ならぬ立花隆さんもその一人でした。ところが、免疫系の代表選手たるマクロファージはがんの転移を手助けしているらしい!

とんでもない裏切り行為!?というよりも、免疫系すら見分けができないということなのです。

がんは、体の中で、正常細胞とほとんど同じようになりすましているのです。体の中の正常細胞をバックアップする全てのシステムを、がん細胞も利用しているのです。抗がん剤とはこのシステムを阻害する薬なので、そのシステムにバックアップされていた正常細胞もがん細胞と同じように衰弱してしまいます。

がんに関する研究は数十年の間にずいぶん進歩しましたが、それは「がんとは何か?」という研究であり、「がんを治すにはどうするか?」という研究はほとんど進んでいない、ということでした。

がん患者としての立花隆さんの結論:「次の検査で転移が見つかったとしても、私は抗がん剤の治療は行わない!」

番組には山中伸弥博士も出演されました。博士が研究されている人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、体のいろいろな臓器になり得る万能細胞で、人工的に作り出したものです。

こういった万能の幹細胞がもともと生体内に備わっていれば、体中のあらゆる部分がトカゲのシッポのように切断しても生えてくるようになります。そうすれば、我々はもっともっと長生きできたはず…

でも、山中博士は「そうではない」とおっしゃいました。幹細胞とはがん細胞のようなものである。幹細胞を作るということは、がん細胞もどきを作るということ。我々の体に幹細胞が備わっていたら、我々は今よりももっとがんになりやすくなり、短命に終わるでしょう…と。

受精卵は爆発的に増殖していきますが、やがて成長とともにその増殖プログラムは封印されます。これを人工的に解錠したのが「iPS細胞」、自然に開いてしまったのが「がん細胞」と言えます。

神の如き「かん細胞」と悪魔の如き「がん細胞」…その違いは小さな濁点のようにわずかなものなのです。

12月9日付の日本経済新聞に大阪大学の研究成果が載っていました。がん細胞をiPS細胞に変化させると、もともと持っていた「がん抑制遺伝子」の働きが強まり、悪性度がほぼゼロになるとのこと。

まさに、「がん」から濁点を取り除く技術。がん細胞にも更生の可能性が出てきました。