ブログネタ
悟りへの道 に参加中!
「如来蔵系経典」(中公文庫版)
「智光明荘厳経」の「三 如来の本質――みずからさとり、他をしてさとらせる」の後半を読みました。

さとりの特質――十六種

文殊師利:如来はどのようにして菩提を得られたのですか?
世尊:如来は根もなく(無根)、よりどころもなくて(無住)、菩提を得たのです。

文殊師利:根とは何ですか?
世尊:身体が実在するという見方(有身見)が根である。誤った判断(虚妄分別)が拠り所である。如来は、菩提の平等性によって全ての現象の平等性を知る。それゆえ、如来は根もなく、拠り所もなくして、菩提を正しく完全にさとられた…

1.
菩提は寂静(内的感官)であり、外的感官は付随的寂静である。
眼は、我・わがもののいずれとしても空(無実体)であり、それが本性であるから寂静と言われる。人は空であることを知り、眼の対象たる諸々の物を追いかけない。以下、耳・鼻・舌・身・意について同様の記述。

2.
菩提は本性なるもので、汚れがなく、虚空と等しい。ゆえに、本性として光り輝いている(自性明浄)。

3.
菩提は何ものも取らず(不取)、何ものも捨てない(不捨)。不取性とは、すべての現象に対し執着しないこと。不捨性とは、すべての現象をひとつも捨棄しないこと。

4.
菩提には認識の根拠もなく(無因相)、対象もない(無所縁)。根拠なしとは、眼識(眼という感官によって知るはたらき)・耳識・鼻識・舌識・身識・意識が知覚されないこと。対象なしとは、対象の形を見ないこと、音声を聞かないこと、香りを嗅がないこと、味わわないこと、触れないこと、現象一般(法)を認識しないこと。

5.
菩提は過去を思惟せず、未来に対して慢心を起こさず、現在に対して多様で個別的な誤った考え方をしない。

6.
菩提は無身(眼・耳・鼻・舌・身・意の感官によって認識されない)であり、無為(諸条件によって条件づけられたのでない絶対:心・意・認識によって認識不可能なもの:生起も存続も消滅もない)である。

7.
菩提は無差別なよりどころである。以下、無差別とよりどころの組み合わせを列挙。
・名もないこと、真如
・一箇所にとどまらないこと、法界(すべての現象の根元あるいは本質)
・差異がないこと、真実なるものの極限
・無知覚(不可得)、不動
・空性(実体のないこと)、無相(根拠となる特質をもたないこと)
・無分別、無願(願い求むべきもののないこと)
・完成するもののないこと、衆生のないこと
・衆生の固有の性質のないこと、虚空
・無知覚、衆生
・無滅、無為
・所行のないこと、さとり
・寂静、涅槃
・形成のないこと、生起のないこと

8.
菩提は身体によっても心によっても明らかにさとれるものではない。身体は無情の物質で、不動で、精神がないからである。心は幻のごとくであって、無核、無実(空っぽ)で、実在せず、作られないからである。

9.
菩提はどんなものによっても表現することはできない。菩提には、それによって語句や会話が成立するようなよりどころが一つも存在しないからである。

10.
菩提は無取性(感覚的に把握するものがないこと)のもの、無所依性(感覚のはたらく場所・対象がないこと)のものである。(眼・耳・鼻・舌・身・意それぞれについて繰り返してあります。)

11.
菩提は空性の同義語である。菩提は空性はない(空性に関して空である)が、その同じ空性はすべての現象にもまたない。

12.
菩提は虚空と等しい。いづれも、平等でもなく不平等でもない。

13.
菩提とは如実の根拠である。菩提がそうであるように、すべては真如の外に超え出ない。

14.
菩提は形相(行相)にはいることによって、無形相としてとどまる。
・形相とはいっさいの善法を作り出すこと。一箇所に固定しない心の状態。すべての現象について、考え、量り、数え、分けること。もろもろの有為の現象に対する個別的認識。
・無形相とはいっさいのものが知覚されないということ。「すべての存在は根拠となる特質をもたない」と観ずる三昧(無相三昧)。なんらの認識作用もなく「量ることを完全に超越する」。諸条件によってつくられたのでない絶対の法。

15.
菩提は無漏(煩悩がこぼれることなく)、無取(執着をもっていない)。
・無漏とは、欲漏(欲望を伴う生存にかかわる汚れ)、有漏(輪廻生存一般にかかわる汚れ)、無明漏(真理に対する無知という汚れ)、見漏(ものの見方にかかわる汚れ)の四漏を離れること。
・無取とは、欲取(欲望に対する執着)、見取(仏教以外のまちがったものの見方に対する執着)、戒禁取(異教徒の戒律や禁制に対する執着)、我語取(我ありという執着)の四取を離れること。

16.
菩提は清浄、無垢、無汚点である。
・清浄とは、実体のないこと(空性)。本性。無戯論。真如。天空。内をよく知ること。など。
・無垢とは、根拠となる特質のないこと(無相)。完全清浄。離戯論。法界(ものの根元)。中空。外に活動しないこと。など。
・無汚点とは、願い求めるもののないこと(無願)。明浄(光り輝くこと)。戯論寂滅。実際(真実の極限)。低空。内外を知覚しないこと。など。

《つづく》