オートとマニュアルという話が一番面白かったように思います。大脳(マニュアル)で何度も稽古をつけると、小脳にその動作の回路が出来上がり、オートマチックに体が動くようになる。いわゆる「体が覚える」ということですが、大脳生理学的に言うと小脳が覚えているということになります。「身体感覚を組み直す」ということは、小脳の回路を変更するということにもなるでしょう。

わたしの仕事の場合も、最初は一動作一動作考えながらしなければいけませんでしたが、今では凝っている場所で自然と手が止まるようになりました。「痛いところがよく分かるね」と言われると嬉しいものです。

この感覚は経験的に身に付くもので、学校で習うことはできないし、師匠から教えてもらうこともできません。患者さんと自分との間には、師匠すら介在することはできないと思います。ましてマニュアル(手引書)などできるわけがない。

古武術の真髄を本になどできるわけがないという甲野さんの意見は、わたしの仕事の場合もうなづけることです。弟子は師匠の技を盗んでいくのであって、教えてもらえるのではありません。昔の教え方の正しさがここにあると思います。

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