45ページに「病気して死ぬだけのじぶん」という言葉が出てきます。病気して死ぬのを待つだけの人生に何の意味があるのか?非常に重い疑問だと思います。

 そもそも、人生に意味があるのか?という疑問の答えを私は知りません。漫画『浮浪雲』の中で、「人生に何の意味もなし!ただ生きるのみ」という一節を見つけた時に、ホッとした記憶があります。人生には、もともと意味が無いのでしょう。意味があるにしても私たち人間には理解できない次元の問題だと思います。

 それは老若男女で事情は同じなのですが、若いといろいろやりたいことがあり、恋人がいたり、子供がいたりで、ゆっくり考える暇が無いし、体の衰えも自覚されないので、悲嘆することは余りありません。しかし老いてくると、友達もひとりひとり去って行き、日々からだの衰えも感じざるを得ず、この重い疑問が毎日のしかかって来るのでしょう。

 だからこそ、老いた身で生きていくことは大きな意味があります。この疑問の重さに耐え続けているということだから。でも、こんなことを言ってもお年寄りの慰めにはなりません。「どんな言葉をかけてあげればいいのか・・・」そんな疑問に悩みながら、そして答えなど見つかりそうもないことに半ば気付きながら、私たちも老いに一歩づつ近づいていきます。