トトガノート

「鍼灸治療室.トガシ」と「公文式小林教室」と「その他もろもろ」の情報を載せています。

2017年06月




最初に電話で話した時は「足が痛くて、最近腰も痛くなってきました」とおっしゃるので、坐骨神経痛と思った。でも、お会いしてみたら、歩き方が変だった。歩幅が小刻みで、足の指をしきりに動かしている。

「歩き出しは良いけど歩いているうちに辛くなる感じですか?それとも歩いていると痛みは楽になる感じですか?」と尋ねてみた。「えー、そうねぇ、変わらないかな…」。

「痛みは鈍い感じ?鋭い感じ?」と尋ねると「ピリピリするのよ」。

今までに無いパターンだ。

おしゃべりな方で、エピソードごとに症状を教えて下さるので、とても楽しい。しかし、楽しんでいる場合ではない。カルテに整理しなければならない。

時系列で整理するとこうなる。

異常を感じたのは半年前の12月。主治医からは貧血と診断された。「冷え」とも言われた。
「冷え性ということですか?」と尋ねると「冬で寒かったからね〜」という答え。後で分かったことだが、主治医の先生は漢方で有名な先生。「冷え」は漢方の診断だったと思われる。

2月には栄養失調と言われた。それから、ずっとビタミン剤を処方されて飲んでいる。

それから少しして、つま先がピリピリするようになった。それが足底、次に足の甲、ふくらはぎ、と少しずつ範囲が広がって、今は太腿まで来た。最近は太腿の筋肉が張る感じがして正座ができなくなってきた。立ち上がる時もフラフラする。

いつ頃にどこまで広がってきたかは日記をつけていたわけではないので分からない。しかし3〜4カ月くらいの期間で着実に進行している様子がうかがえる。

「お医者さんは何ておっしゃっているんですか?」「首を傾げているのよ(笑)」
どうも笑い事ではない。

「何か大きな病気をされたことはありますか?」「んー、最近は無いよ。」
本当かな…

「手術とかもやったことは無いですか?」「ああ、胃は取ったことあるよ。全摘。」
ほら、やっぱり。

「いつごろですか?」「20年以上前だよ。」
貧血って、悪性貧血?

「栄養失調って、ビタミンB12のことですかね?ビタミン剤というのはビタミンB12?」
「んー、総合ビタミン剤って言ってたな…」
なんてのどかな名前…。

「手術の後はずっとビタミンB12を飲んでたわけですよね?」「んー、飲んでたけど、もうここ何年かは飲んでないわよ。もう間に合ってるみたい。」

そんな話をしながら施術している間も、クライアントの足の指は絶えず動いている。仰向けでリラックスしている筈なのだが。

「今、足の指が動いているんですけど、ピリピリするから動かしているんですか?」と尋ねると、指の動きが止まった。意識すると止まるようだ。

「この次、お医者さんの診察を受けるのはいつですか?」「明日。また採血検査して薬の効きを見るって言ってた。」
急いで対処した方が良いような気がするな…。でも、明日なら良いか…。

「私の方の治療はどうします?」「肩が凄く軽くなったから、5日後くらいにまた頼むわ。その後はサクランボで暫く何もできなくなると思うから。」

しかし、とても気になったので、家に戻ってからネットで調べてみた。亜急性連合性脊髄変性症という病気が検索で現れた。

『チクチクする痛み・全身の脱力感・歩行困難』
ピッタリだ。

『ビタミンB12は肝臓に蓄えがあれば、3〜5年は間に合う。』
でも、全摘しているのだから、ずっと補わなくていいはずがない。

『欠乏症が確認されれば、ビタミンB12の注射補充療法を行います。経口投与薬では、ビタミンB12を吸収できない事が多いため、注射が有効です。』
注射をしたとは言わなかった。経口投与。しかも総合ビタミン剤!

『発症から早い段階で治療を行うと、後遺症が残る事は少ない』
え!遅かったら後遺症残るの?

『後柱及び側柱のミエリン鞘がまだら状に失われていくことによる亜急性・連合性の変性が認められる。』『MRI画像所見で確認する』『長期のビタミンB12欠乏症は、神経系に不可逆の障害をもたらす。』
不可逆!戻らない!

私はすぐに電話をかけた。
「主治医の先生がちゃんと考えて下さっているとは思いますし、私は医者ではないのでこんなことは言うべきではないのですが…」と前置きをして、上記のことを話した。
「サクランボが始まる前に注射くらいはしてもらった方が良いと思うんです!」

翌日、主治医と相談した後で、電話があった。
「総合病院に紹介状を書いてもらいました。なので、この次の先生の予約はキャンセルで…」
「勿論です。きちんと診てもらって下さい!」

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「明日、父の告別式なのですが、腰が痛くて…」と電話をいただいた。

悲しい報せを聞いた人たちが、不規則に、次々に訪れる。喪主ともなれば、ただでさえ悲しいのに、心休まる暇が無い。他の家族が接客する家の奥で、静かに施術が始まった。

クライアントは3月いっぱいで会社を定年退職したと言う。今は、8月。現代ではまだまだ若い年代に属する筈だが、腰が曲がっている。上半身が水平と言ったら言い過ぎだが、最近あまり見かけないくらいに曲がっている。

「腰はいつぐらいから曲がっていますか?」と尋ねると、
「会社を辞めて4月から畑をやらされました。それからですかね〜。(亡くなった)父に厳しく監督されて、休む暇なく働かされたんです(笑)」

「うつ伏せにはなれますか?」
「ええ」と言って、彼は難なくうつ伏せになった。身のこなしは悪くない。ベッドの上では腰は真っ直ぐになっている。腰椎の変形は無いようだ。

その時、チラッと手が震えているのが見えた。ひょっとして…
「何か治療中の病気はありませんか?」
「パーキンソン病と言われてます。」
やっぱり、そうか。気づくのが遅かった。プロとしては失格!でも、すぐ免許取消になるわけではないので治療を続行…。

背中の凝り具合を触診しながら、手元のタブレットでパーキンソン病の論文を検索。そこで目を引いたのがこの論文。異常な筋緊張が立位姿勢を異常にするとあり、異常な筋緊張を起こす筋肉として、斜角筋群,大胸筋,腹直筋,大腰筋,ハムストリングス,下腿三頭筋が挙げてある。論文では、BOTOX(ボツリヌス菌の毒)を注射して筋緊張を麻痺させ、立位姿勢の異常を改善させている。

さて、目の前のクライアントはベッドの上に寝ている。ゆえに異常な筋緊張は起きていない。それでも腓腹筋には硬結が見られ、小刻みに震えている。

私は論文の内容を話し、同様の治療が受けられるかどうか主治医に相談することを薦めた。

そして、異常な立位姿勢のために疲れ切っている腰の筋肉に鍼と灸を行った。でも、これは対症療法。根本から改善する手立ても講じなければならない。

パーキンソン病の根本はドーパミンの不足。主治医から薬には処方されているが、ドーパミンが増えるライフスタイルを提案することはできるはずだ。ドーパミンは「快感や多幸感、意欲、運動などの機能を司る神経伝達物質。欲求が満たされたとき、あるいは満たされることがわかったときに活性化し、快感の感覚を与える「報酬系」ホルモンである」

「何か趣味はありませんか?」と尋ねてはみたが、答えは予想できた。この国で個性が大切という教育が行われ出したのは私たちよりも後の世代。このクライアントは私より上の世代だし、亡くなられたお父さんは厳しい人だったようだ。

「何もないですね〜」
「そうですよね〜。私たちは変な道楽は持たないように教育されましたからね(笑)」

さらに批判を恐れずに続けた。
「うまい具合にと言っては語弊があるのですが、怒る人も居なくなったことですし、何か道楽を見つけましょう。どうしてもあれがやりたいとか、どうしてもあれが欲しいとか、そういうものを。そして、会社を終えた後の第二の人生を楽しみましょう!」

そして、この家に来てから気になっていたことを尋ねてみた。この家の壁には書道の作品が何点も貼ってあったのだ。更に書棚には、各種資格試験のテキスト、美術品や工芸品の写真集、その鑑定法の本、将棋・囲碁などなど…様々なジャンルの本が並んでいる。
「こちらの書道はだれが書かれたのですが?」「息子です。」
「この書棚も?」「はい、息子のです。」

「息子さんて、ドーパミンの塊のような方ですね!」
「ハハハハハ。これはこれで困ったものですが。」

「でも、ここは病気が治るまで、息子さんのようになってみましょう!爺さんが亡くなったら、人が変わったみたいだって言われるくらいに(笑)。今度は息子さんを困らせてやりましょう!」

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