トトガノート

「鍼灸治療室.トガシ」と「公文式小林教室」と「その他もろもろ」の情報を載せています。

2017年03月




当院から北に5キロ。それでも結構雪の降り方は違う。少し多めの雪景色の奥に、そのクライアントの家は有った。雪が多い地区ほど除雪をきちんとしている。だから、雪が多い地区で雪に困ったことは開業以来一度もない。逆に、雪の少ない地区で雪に困ることは珍しくない。面白い現象である。

クライアントは80歳。女性。「雑巾をしぼる時、一番痛みを感じます。」「何もしてなくても痛いです。」と彼女は症状を訴えた。「12月に、どっと雪が降った時に除雪をして…痛みはそれからです。」

近くの整形外科には通っている。セレコックス(鎮痛剤)は一日3回服用。その他にロキソニンテープや塗り薬も処方されているが、痒くなるから使っていない。

痛みが気になるので飲み薬はやめられないが、もっときちんと痛みを止めたいので電話下さったということだった。「鍼だと一発で治るんでしょう?」

ばね指や腱鞘炎は使いすぎが原因なので、たとえ鍼といえども除雪を続けるうちは治りにくいだろうことは説明した。ただ、膨らんでいる筈の腱鞘は、施術によって血流が良くなるから楽になるだろう…。

「あ、楽になりました!体も軽くなった。」施術後に、彼女は明るい声で叫んだ。

マッサージのような治療は未経験ということなので、全身の血流改善はかなり爽快なはずだ。

彼女は特におしゃべりと言う印象ではなかったが、自分の境遇を説明するのが上手だった。施術が終わったころには、彼女について随分知っている自分に驚いた。

亡くなった旦那さんのこと、姉妹のこと、自慢のお孫さんのこと…そして、病気の娘さんのこと。

「娘はガンの治療中で、奥で休んでいるんです。」

彼女は2人娘さんがいた。次女の方が数年前にガンで亡くなった。長女は亡くなるまでの間、妹を献身的に看病した。仕事は休むことが多かったので、特に職場の人から言われたわけではなかったが自主的に退職した。皮肉なことに、妹が亡くなって数か月後、自分がガンに罹っていることが分かった。

彼女(クライアント)は、女性限定のスポーツジムに週3回、11月まで通っていた。コーラスもやっていた。雪道が心配なので今は両方とも休んでいる。

「3月から始めるんです。」と彼女は明るく言った。
「3月って…明日じゃないですか?」

「そうです。雪も、これからなら大したことないでしょうから。」
「お友達とのおしゃべりが楽しみですね?」

「そうなんです。どっちも私が年長だから、もうやめようかとも思っているんですけど。」
「いやいや、他の人の励みになりますから。それに次の人が同じ悩みを持つことになりますよ(笑)」

私は、スポーツジムやコーラスを止めた時期と指の痛みを感じた時期が同じであることに気がついた。そして、次回の予約について提案した。こんな提案を毎回していたら商売あがったりなんだけど。

「この次の治療なんですが…どうでしょう。明日から、ジムにコーラスにと忙しくなるわけですから、ちょっと様子を見ては?○○さんが多趣味な方だと分かって安心したんです。

痛みというのは、何もせずに向かい合っているとますます痛くなるものです。ちょうど、アパートの隣の部屋の物音みたいなものです。気になりだすと聞き耳をたてるようになる。そうすると、どんな小さな音でも気になって仕方がなくなります。

これから、除雪をすることもなくなり、その代わりに運動もおしゃべりもということになると、ひとりでに良くなっていくような気がします。

私は残念ながら出張専門なので、予約をしてしまえば、外出できなくなってしまいます。外に出て、いろんな刺激を受けると、痛みも気にならなくなりますよ、きっと。」

すると彼女は答えた。
「娘も外出しなさいって言うんですよ。私のことは良いからって。」

そうだった。娘さんは、妹の看病のために自分の人生を犠牲にしてしまったような人だった。

「娘さんの分も楽しまないといけないですね!」と言ったが、彼女は答えなかった。

顔を見ると、今にも涙がこぼれそうな目で頷いていた。

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・百円未満は切り捨てとします

※今回反映します消費者物価指数(生鮮食品を除く)99.6は1月のものです。
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・3月の価格




この方は90歳のお婆ちゃん。

ある日、電話に出たら、相手の声が聞こえない。「電話が遠いので、もっと大きい声でお願いします!」と言ったが、やはり聞こえないので受話器を置くしかなかった。

それから、かかってくる電話全て相手の声が聞こえないことが分かり、電話機の修理を家族に頼んだ。他の家族はみんなケータイを持っているから、固定電話は使わない。

「どれどれ」と家族が電話機を試してみると、ちゃんと聴こえる。

「婆ちゃんの耳が壊れてるんじゃないの?」と言われ、反対の右耳に受話器を当ててみたらちゃんと聴こえた。右耳は聞こえていたから、左耳が突発性難聴になっているのに気づかなかったのである。

「電話機を疑う前に自分を疑って下さい。」と家族は手厳しい。

「年齢を考えると、耳が聞こえにくいのは珍しくないかと…」と主治医も冷たい。

「とってもがっかりしました。」と、彼女は私に打ち明けた。

「耳が聞こえないのが当たり前だろうからね…」と肩を落とした。

このクライアントには10日に一度訪問している。突発性難聴になったのは5日前。診てみると、左の肩から首・後頭部にかけてとても硬かった。何年来のお付き合いであるが、こんなに凝っているのは初めてだ。

突発性難聴は原因不明とされ、いろいろなケースが考えられる。医師が治療を行う場合は耳の周りの血流を調整する薬が処方されることが多い、と説明した。

そして、それほど時間が経っているわけでもないし、首・後頭部(耳周り)が今までに無いくらい凝っているから、これを解せば可能性はあるかもしれないと伝えた。

入念に手技でコリを取り除いた上で、鍼と灸の施術も行った。

施術後、「何だか良いみたい。」と笑顔。「今度は5日後にしてみようかね?」ということになった。

5日後に伺ってみると、前回施術してから左耳の聴覚がだいぶ戻ったと喜んでくれた。そして、その更に10日後に伺った時には「完全に治った」と言ってくれた。

年寄りの耳が聞こえないのは特段驚くことではない、と言われればそうかもしれない。とは言え、本人にしてみれば、90歳とはいえ、というよりはむしろ、90歳だからこそ、聞こえなくなることは、とてもとてもショックなのである。

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